あらゆるコストが上がる中、値上げの巧拙が問われている。客離れを引き起こさないためには、企業・ブランドに対するロイヤルティー(愛着心)を高めるしかない。今連載の最終回では、既存顧客を守るだけでなく、新規顧客の獲得のためにも濃密な関係づくりに取り組む企業に迫る。
■連載記事のラインアップ
・「推しビール」首位はアサヒ 次期社長がやめた「押し付け」
・音楽配信の「推し」首位はアップル 巧妙な生態系、アマゾンと明暗
・旅行サイトは3強が大接戦 安定の老舗、固定ファンを逃さず
・「推し活」マーケティングの威力 定番おやつから新ビジネスが開花
・お薦めの回転ずし首位はあの伏兵 価格競争せず接客で「下克上」
・激戦ビジネスホテル 「推し宿」首位は大浴場と朝食でアパに勝つ
・ウーバーじゃなかった フードデリバリー「推し」首位は北欧生まれ
・愛されエアライン首位はANAかJALか 顧客の声から不断の改善
・「推しカード」首位は楽天カード 利用者の声、NPSで多角的に分析
・「推しアパレル」ZARAに軍配 グローバルワークやワークマンが追う
・資生堂・花王に勝った スキンケア化粧品の推し首位はリピート重視
・「業績アップの先行指標」 NPSを上げると株主にも恩恵
・値上げでも売れる王将、トミカ、メルセデス 強固なファンが下支え(今回)
コスト上昇分のうち、価格転嫁できているのは4割程度──。帝国データバンクは2023年1月、約1万1000社の調査結果を公表した。価格転嫁率が高かったのは、卸売業や原材料メーカー。一方、サービス業など消費者向けの業種は総じて低く、2割以下にとどまった。
例えば「1皿100円」を売りにしてきた回転ずし業界では、スシローとくら寿司が22年10月から値上げに踏み切ったが、毎月の既存店売上高は一時、前年比でスシローが約30%減、くら寿司は約5%減に。値上げの効果を打ち消すほどの客離れに苦しむことになった。
業界関係者は「値上げをしていない『はま寿司』に客が流れている」と話す。回転ずしを取り上げた今連載の5回目で見たように、スシローもくら寿司も顧客推奨度(NPS、ネットプロモータースコア)の点数は低い。ロイヤルティーが低ければ、当然安いほうへと客はなびく。
消費者の財布のひもは依然として固く、値上げに踏み出せない企業は多い。しかし、値上げに成功した外食チェーンもある。
値上げ効果で客単価も上昇
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