日経ビジネスが消費者調査からはじき出した「顧客推奨度(NPS、ネットプロモータースコア)」を基に、様々な業界の企業・ブランドを愛され度合いで順位付けした「推し企業」ランキング。群雄割拠のアパレル業界のランキングを制したのは世界最大手のインディテックス(スペイン)が運営する「ZARA(ザラ)」。「ユニクロ」や「ワークマン」といった日本のブランドはどんな評価を得たのか。
■連載記事のラインアップ
・「推しビール」首位はアサヒ 次期社長がやめた「押し付け」
・音楽配信の「推し」首位はアップル 巧妙な生態系、アマゾンと明暗
・旅行サイトは3強が大接戦 安定の老舗、固定ファンを逃さず
・「推し活」マーケティングの威力 定番おやつから新ビジネスが開花
・お薦めの回転ずし首位はあの伏兵 価格競争せず接客で「下克上」
・激戦ビジネスホテル 「推し宿」首位は大浴場と朝食でアパに勝つ
・ウーバーじゃなかった フードデリバリー「推し」首位は北欧生まれ
・愛されエアライン首位はANAかJALか 顧客の声から不断の改善
・「推しカード」首位は楽天カード 利用者の声、NPSで多角的に分析
・「推しアパレル」ZARAに軍配 グローバルワークやワークマンが追う(今回)
・資生堂・花王に勝った スキンケア化粧品の推し首位はリピート重視
・「業績アップの先行指標」 NPSを上げると株主にも恩恵
・値上げでも売れる王将、トミカ、メルセデス 強固なファンが下支え
日本のアパレル市場の規模は2021年時点で7兆6105億円(矢野経済研究所調べ)と新型コロナウイルス禍前の9兆円超の水準から落ち込んでいる。コロナ禍は落ち着きを見せてきているが、リモートワークの浸透など人々の暮らしの変化でアパレル需要に影響が残ることも考えられる。
そんなアパレル業界のNPSランキングで首位になったのはZARAだった。コロナを受けてアパレルでも利用が広がったEC(電子商取引)への対応が目立つ。
一般に服のオンラインショップではサイズや着心地が分かりにくい。ZARAは独自のアプリに身長や体重、好みのフィット感などを入力すると、推奨サイズを示す機能を導入。届いた商品が気に入らなかった場合は、店頭なら無料で返品を受け付けることで、オンライン購入の心理的なハードルをぐっと下げた。
リアル店舗とオンラインの融合にも取り組んでおり、アプリの「店舗モード」では、実店舗にある商品の位置検索や試着室の予約ができる。利用者の利便性を重視した仕組みが、20代を中心に高く支持された(ランキング表は次ページに)。

データ分析からヒットを生む
ZARAと2.1ポイント差で2位となったのが「グローバルワーク」だ。運営会社アダストリアの売上高は国内アパレル業界3位の2015億円(22年2月期)。20~40代やファミリー向けのグローバルワークは売上高の約2割を占める主力ブランドだ。
アダストリアは19年にデータ分析を開始し、年に2回、独自でNPS調査を実施している。顧客が自由に書き込むコメント欄の声も分析しながら、自社のECサイトや商品の改善に活用する。

グローバルワークの「ウツクシルエットパンツ」は、まさにデータ分析に基づいた改善がヒットにつながった好例だ。15年の発売当初の商品名は「TRテーパードパンツ」。TRは素材の名称で、テーパードは足首に向けて細くなるシルエットのこと。「売りにしたいことを名前に詰め込んだが、消費者には響かなかった」(執行役員 グローバル営業本部長の太田訓氏)

18年に実験的に始めたECサイトのレビュー分析で、消費者はパンツのシルエットを重視していることが分かった。消費者の声に合わせて形を修正し、サイズのラインアップを増やした。商品名も消費者に分かりやすいように変更。結果、23年2月時点で累計販売枚数は300万枚を突破。ブランドの主力商品に育った。
アダストリア独自のNPS調査ではスコアは右肩上がりが続いているという。「データを示すと商品開発時に説得力が増し、部署を越えて改善策を話し合いやすくなった」とマーケティング本部WEB事業部の小圷(こあくつ)真莉子氏は言う。社内でデータ分析の重要性に関する共通認識が出来上がり、好循環が生まれている。
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