日経ビジネスが1万人規模の消費者調査からはじき出した「顧客推奨度(NPS、ネットプロモータースコア)」を基に、様々な業界の企業・ブランドを愛され度合いで順位付けした「推し企業」ランキング。フードデリバリー業界で大手のUber Eats(ウーバーイーツ)などを退けてトップになったのは、フィンランド生まれの新興ブランドだ。
■連載記事のラインアップ
・「推しビール」首位はアサヒ 次期社長がやめた「押し付け」
・音楽配信の「推し」首位はアップル 巧妙な生態系、アマゾンと明暗
・旅行サイトは3強が大接戦 安定の老舗、固定ファンを逃さず
・「推し活」マーケティングの威力 定番おやつから新ビジネスが開花
・お薦めの回転ずし首位はあの伏兵 価格競争せず接客で「下克上」
・激戦ビジネスホテル 「推し宿」首位は大浴場と朝食でアパに勝つ
・ウーバーじゃなかった フードデリバリー「推し」首位は北欧生まれ(今回)
・愛されエアライン首位はANAかJALか 顧客の声から不断の改善
・「推しカード」首位は楽天カード 利用者の声、NPSで多角的に分析
・「推しアパレル」ZARAに軍配 グローバルワークやワークマンが追う
・資生堂・花王に勝った スキンケア化粧品の推し首位はリピート重視
・「業績アップの先行指標」 NPSを上げると株主にも恩恵
・値上げでも売れる王将、トミカ、メルセデス 強固なファンが下支え
新型コロナウイルス禍を機に急速に普及したフードデリバリーサービス。飲食関連の情報サービスを手掛けるエヌピーディー・ジャパン(東京・港)によると、2022年の国内市場規模は約7489億円と、前年から5.3%縮小したもようだ。
新規参入が相次ぎ、戦国時代の様相を呈していたのが一転、22年は撤退する企業が相次いだ。コロナ禍が落ち着きを見せ、人々が「巣ごもり」を脱する中で市場の成長にブレーキがかかった形だ。
そんな転機に差し掛かったこの業界の「推し企業」ランキングを制したのは、ウーバーイーツでもそのライバルの出前館でもなかった。

配達パートナーあえて「登録しづらく」
フードデリバリーの2強を退けたのは、フィンランド発の新興ブランド、Wolt(ウォルト)だった。
ウォルトは20年3月参入の後発組。展開地域は24都道府県41エリアで、全国47都道府県でサービスを展開するウーバーイーツや出前館に劣る。しかし「後発であるがゆえに、どうすれば我々を選んでいただけるのかを考えた」。Wolt Japan(東京・渋谷)の野地春菜代表は、そう振り返る。
たどり着いたのは「おもてなしデリバリー」というコンセプトだ。磨いたのは、サービス品質である。
この業界はNPSが他業界に比べて低い。それは「ボタンの掛け違いが起きやすいサービス」(野地氏)だからだ。消費者が求めるのは、出来たての料理を早く、丁寧に届けてくれること。その期待から少しでも外れると、厳しい評価にさらされる。かつてウーバーイーツの日本法人に在籍した野地氏は、そのことを痛感している。

配達が遅い、届いた料理が傾いていた、配達員が無愛想だった、運転マナーが悪い──。不満の芽を摘み取って改善できなければ、二度と注文してもらえないシビアな業界だからこそ、ウォルトはカスタマーサポートの専門チームを社内に設置した。
心掛けているのは、感情が伝わるコミュニケーション。一人ひとりのサポートスタッフに一定の裁量を与え、温かみのあるやり取りを実践している。顧客対応を外注し、コストを抑えるのではなく、投資領域と捉えて強化することで顧客体験を高める方向にかじを切った。
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