ポイントプログラムの改廃や付与ルールの変更の裏側には、企業の戦略が密接に絡み合っている。2回目はここ1年ほどポイント付与ルールの変更が続く楽天グループを取り上げる。一部のユーザーからは「“改悪”続きだから、乗り換えを検討する」という声まで上がっているが、「楽天経済圏」の強さは揺らぎそうにない。なぜなら、「ポイントROI(投資収益率)」という指標で緻密に計算されたルール変更だからだ。

■掲載予定 内容は予告なく変更することがあります
(1)ソフトバンク・ヤフー離脱の衝撃 Tポイントは生き残れるか
(2)“ポイント改悪”続きの楽天 始まったキャンペーンと顧客の選別(今回)
(3)コロナ禍で再考 ANAと三井住友がポイント戦略を強化
(4)陸マイラーに人気のカード「SPG AMEX」大幅リニューアルを読み解く

 「楽天、改悪続きだから乗り換え検討しようかな」「楽天経済圏の崩壊が見えてきたな」。2月1日、ツイッター上には楽天への批判的なつぶやきがあふれていた。ヤフー・リアルタイム検索によると、「楽天」と「改悪」という2つのキーワードを含むツイートは2月1日だけで2500件を超えた。

 この日、楽天証券は4月以降にポイント付与ルールを順次見直すと発表した。現在は楽天証券で投資信託をポイントを使って月500円以上購入すると楽天市場での還元率が1%上乗せされているが、4月からポイントを使って3万円以上の購入かつ楽天銀行口座との連携も行って、0.5%上乗せと条件が厳しくなる。投資信託を楽天カード決済で購入するとたまっていた1%分のポイントも、9月買い付け分からは低コストの投資信託を中心に0.2%に低下する。

楽天証券でのポイント付与ルールの変更が大きく変更される
楽天証券でのポイント付与ルールの変更が大きく変更される
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 それだけではない。楽天証券は2021年12月にも大きな“改悪”を発表していた。これまで保有する投資信託残高に応じてポイントを付与していたが、22年4月以降は投資信託を買い増して残高が一定額に到達したときにだけポイント付与することにしたのだ。

 一方、ライバルのSBI証券がポイントプログラムを拡充していることから「SBI証券へ乗り換えを検討します」というツイートも少なくない。実際、SBI証券は他社から投信残高を移管するとポイントを付与するキャンペーンをスタート。SBIホールディングス(HD)の北尾吉孝社長は「楽天証券がポイントの”改悪”を発表してからどんどん移ってきている。うちは追い打ちをかけるようにキャンペーンも始めた」と、楽天から顧客を奪う姿勢を鮮明にしている。

 楽天証券に限らず、楽天グループでは、ここ1年ほど楽天市場や楽天カードなどでポイント付与ルールの変更が相次いでいる。そのほとんどは、ポイント付与率の低下やポイント付与上限の引き下げなど、利用者にとっては“改悪”となるものだ。これまでポイントを核に経済圏を拡大してきた楽天に、今何が起きているのか。

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