コンビニエンスストア、スーパーから外食、ネット通販まで、あらゆる購買の場面で活用されているポイントプログラム。野村総合研究所の推計によると、2020年度のポイント・マイレージ発行額は少なく見積もっても1.4兆円を突破したという。もともとは買い物の“オマケ”として始まったものが、今では顧客を囲い込んで“経済圏”を形成するための重要なツールになった。ポイントプログラム改廃や付与ルール変更の裏側には、企業の戦略が密接に絡み合っている。1回目はソフトバンクとヤフーの離脱で衝撃が走った共通ポイントの元祖「Tポイント」を取り上げる。
■掲載予定 内容は予告なく変更することがあります
(1)ソフトバンク・ヤフー離脱の衝撃 Tポイントは生き残れるか (今回)
(2)“ポイント改悪”続きの楽天 始まったキャンペーンと顧客の選別
(3)コロナ禍で再考 ANAと三井住友がポイント戦略を強化
(4)陸マイラーに人気のカード「SPG AMEX」大幅リニューアルを読み解く
2022年4月、共通ポイント「Tポイント」陣営からZホールディングス(旧ヤフー)とソフトバンクが離脱する。これまでネット通販の「Yahoo!ショッピング」や「PayPayモール」で1%分たまっていたTポイントは、ソフトバンクグループのスマートフォン決済サービス「PayPay」での支払いに使える「PayPayボーナス」に切り替わる。ソフトバンクの通信料金の支払いでたまっていた0.5%分のTポイントは、ソフトバンク独自のポイントに切り替わり、これもPayPayボーナスに移行できるようになる。
ヤフーがTポイント陣営に加わったのは約10年前。12年6月にTポイントを運営してきたカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と戦略的資本・業務提携を結び、「リアルとネットを横断した最大の共通ポイントになる」とうたった。翌13年7月にヤフーが独自ポイントをTポイントに移行させ、14年7月にはソフトバンクも独自ポイントをやめてTポイントに切り替えた。
企業のポイント戦略をコンサルティングしているエムズコミュニケイト(東京・港)の岡田祐子社長は「それまでのソフトバンクグループはポイント戦略への関心が希薄だった」と振り返る。例えばソフトバンクの独自ポイントの使い道は機種変更やオプション品の購入しかなく、ユーザーが積極的にためようと思うものではなかった。これが、コンビニやドラッグストアなど幅広い店舗で使えるTポイントになったことで、使い勝手が飛躍的に上がった。

加えて、当時すでに4000万人を超えていたTポイント会員をヤフーやソフトバンクのサービスに取り込む狙いもあった。Tポイントをネット上で使う際のIDを、CCCの「T-ID」からヤフーの「Yahoo! JAPAN ID」に統一したことで、Tポイント会員は自動的にヤフー会員にもなったのだ。そして13年10月、当時ヤフーの会長だった孫正義氏自らが「eコマース革命」を宣言。出店コスト無料など大胆な策を打ち出して、先行する楽天市場を追い抜いてEC(電子商取引)サイトナンバーワンになるとぶち上げた。
PayPay開始で関係性に変化
一方、CCC側にもヤフー・ソフトバンクと組むメリットがあった。消費者の購買行動をより正確に把握できるようになるからだ。
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