同社はポテンシャル採用を通じ毎年200人ほどを確保。金谷本部長は「画一化された人材ではなく、多様な個性の集合体になってきている」と説明する。

 さくらインターネットもヤフーも、出身校のブランドではなくそこで「何を学んだか」「学んだことをどう生かそうとしているか」を見極めようとしている。もはや履歴書の学校名に威光はない。

日東電工、高専生スカウトチーム

 機械や電気、化学系の高専生はこれまで全国各地の工場や開発拠点に配属され、現場を支える役割を背負ってきた。だが、地域にとどめるのではなく、経営の全体最適の中で高専生の活力を引き出そうとするのが日東電工だ。

 19年、生産現場で働いていた高専出身者を人事部に呼び寄せ、その担当者をリーダーに高専生を専門にスカウトするチームを発足させた。お互いスムーズに理解し合える関係を築き、19年に45人、20年に41人を採用するなど他企業と比較しても多くの人材を呼び寄せた。

 あわせて20年には事業所ごとに人材を採用していた方式をやめ、本社が一手に全国の人材獲得をカバーする体制に切り替えた。

 青木信行執行役員はその狙いを「地域最適ではなく会社全体の人材リソースを見極めて配置していくため」と話す。同社は生産技術の担当から経営企画の設備投資を管理する担当部長までローテーションさせたり、海外の工場立ち上げに電子デバイス材料の開発担当者を送り込んだりと高専人材を使いこなす。鈴鹿高専出身で回路材事業部の大薮恭也開発部長は「高専生の学習はひたすら実習と試験の繰り返しでつらかったが、技術だけでなく管理を含めてやりきる力が身についている」と話す。

 4年制大学を出た人材と肩を並べるどころか、それ以上の期待もかけられる高専生。企業の中にはその才能を見込んで採用を続け、会社の成長を託しているケースも多い。連載の2回目では経営の要のポジションで活躍する高専出身者たちを取り上げる。

「高等専門学校(高専)とは」

 実務に強い工学系技術者を養成する目的で1962年に国立高専が12校設立されたのがはじまり。専門の教育機関設立を望む産業界の要望は強く、現在は全国に57校(国立51校、公立・私立それぞれ3校)が設置されている。全国の生徒数(1年から5年)は約5万人で、同世代の約1%に相当する。

 高専の本科は中学校卒業を入学資格とし、入学時に機械・材料系や情報系などいずれかの学科を選び、5年(商船は5年半)かけて専門性を磨く。自分で課題を設定し、実験や演習を通して答えを導き出す教育を重視している。「技術の吸収力の高さ」「まず手を動かしてみる行動力」を評価する企業は多い。

 本科卒業者の進路は多岐にわたる。企業や官公庁への就職が約6割で残りは専攻科への進学や大学3年次への編入などが占める。

 近年、全国の国立高専を束ねる独立行政法人の国立高等専門学校機構が力を入れているのが2つのプログラム。AI(人工知能)やデータサイエンス、ロボティクスなど次世代の産業を担える人材の専門教育(COMPASS5.0)と、社会課題解決のための実践教育(GEAR5.0)だ。それぞれ全国に拠点校を設け、20年度からスタート。企業や自治体から注目を集めている。

 学生同士が技術を競い合うロボットコンテスト(ロボコン)やプログラミングコンテスト(プロコン)は定番イベント。19年(第1回としたのは20年)からはAIを使ったビジネスアイデアを競い合うディープラーニングコンテストも開かれ、話題になっている。

この記事はシリーズ「学歴ダイバーシティー 脚光浴びる高専、美大、高卒人材」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。