入社後はチームプレーに徹する行動力と成果が評価軸となり、給与にひも付く。期待値に対し「肯定ファースト」「リード&フォロー」「伝わるまで話す」の3要素に重点を置き、成果を見る。早くも2年目から、卒業した学校や年齢に一切関係なく、給与に差がつくようになる。

求人倍率は20~30倍

 同社の創業は1996年、舞鶴高専出身の田中邦裕社長が高専寮の一室でレンタルサーバーのサービスを立ち上げたのがきっかけだ。それだけに4年制の総合大学にこだわらない思いは人一倍強い。

 田中社長は高専生について「本来なら企業の中核的な人材になれるはずなのに、現場の単純な作業者として雇われることが多い。日本の産業界として非常にもったいないと思っている」と語る。2022年春には吉沢さんのほかにもう1人高専出身者が入社する。2年間学ぶ専門学校の卒業生も含め、様々な学びやを巣立った多様な人材を会社の活力に変えようとする。

国立高等専門学校機構の谷口功理事長は、専門教育を受けた人材は引っ張りだこだと語る
国立高等専門学校機構の谷口功理事長は、専門教育を受けた人材は引っ張りだこだと語る

 「モノづくりはもとより、新しい価値を生み出す『コトづくり』でも高度な技術者が育っている」。全国の国立高専を束ねる独立行政法人、国立高等専門学校機構の谷口功理事長はこう明言する。

 企業が高専生を採用したい場合、高専へ求人を出す。製造業を支える機械、化学系のみならず情報系でも実践的な専門教育を受けた人材は引っ張りだこ。5年間の本科卒業者は、20年の就職率が98.8%あり大学卒業者より3ポイントほど高い。企業の求人倍率は20~30倍に達するという。

威光消える「合格歴」

 20年春入社組から高専生の採用に力を入れ始めたのがキリンホールディングス傘下のキリンビールだ。30年ほど前までは定期採用していたが、その後、不定期に少数を雇い入れるだけで19年はわずか2人だった。だが、20年は17人をスカウトした。触手を伸ばす理由は、あらゆるモノがネットにつながるIoTや自動化など生産現場の変革が急務だからだ。

 ビールは若者のアルコール離れや酒税改正などで競争が激しい。生産改革なくして生き残りはあり得ないとあって「若いうちから実践的な教育を受けてきた高専の人材が戦略上必要だった」(生産部)。世代交代を見据えた時にも適切なタイミングだったという。

 eコマースから金融まで、データを活用したビジネスの大競争を生き抜かなければならないZホールディングス傘下のヤフー。祖業のポータルサイトの利用者は40代以上が中心で若年層に浸透しきれていない。競争を勝ち抜くため2016年、思い切ったリクルーティング活動にかじを切った。

 新卒一括採用を捨て去り、新卒、既卒問わず30歳以下の人材を通年採用する「ポテンシャル採用」を始めたのだ。初任給は「大学院博士」「同修士修了」「大学学部(学士)卒、高専卒、高卒など」と3つに区分される。

 上記に見た通り、大学卒と高専卒の給与水準を分ける企業は多い(本科の後に2年の専攻科を卒業した場合は学士扱い)。だが、ヤフーは同じ待遇だ。これとは別に、著名な国際学会での論文発表や社会にインパクトを与えた技術の持ち主、実力派の元起業家などは、審査次第で通常の通年採用者より多額の650万円以上を支給する「プロフェッショナル採用」もある。実力重視の採用はさくらインターネットとも似通っている。

 ヤフーがこの制度を取り入れるのは、高専生が本科を終えた後、専攻科に進学したり、大学に編入したりするなど「(従来の学歴をベースにした)プロフェッショナルの考え方が過去のものになっているから」(コーポレートPD本部の金谷俊樹本部長)だ。

 高専生が進学して専門性を深めたり、経営や社会科学など専門外の知識を習得したりする傾向が強まっている。入社希望者を、どんな学校に入ったかという「合格歴」ではなく「学習歴」で評価しようとする。

次ページ 日東電工、高専生スカウトチーム