前回は、世代・トレンド評論家の牛窪恵氏に、誰が何のために「○○世代」を定義していて、定義するメリットは何かを教えてもらった。しかし、ある年齢層の人々をひとくくりにすることにはデメリットもある。それを押さえた上で、企業・家庭内でジェネレーションギャップ(世代間格差)を埋めるためにできること、そして、Z世代の次の「α世代」についても教えてもらう。

世代を定義することのデメリットは何でしょうか? 世代を定義する狙いの1つに、ジェネレーションギャップを解決することがありましたが、定義することで逆に差が広がる恐れはないですか?

牛窪恵氏(以下、牛窪氏):ステレオタイプがジェネレーションギャップを助長する一面は確かにあります。例えば、Z世代はSNS(交流サイト)世代といわれていますが、20代でもスマートフォンを持っていない人は約1割いますし、持っていてもSNSを使用しているとは限りません。ステレオタイプは、多くに当てはまるとしても、全員がそうではないことをしっかりと認識することが重要です。

<span class="fontBold">牛窪恵(うしくぼ・めぐみ)氏</span><br/>1968年東京生まれ。91年日本大学芸術学部・映画学科(脚本)卒。大手出版社に勤務したのち、2001年にマーケティングを中心に行うインフィニティを設立、同代表取締役。19年立教大学大学院で経営学修士号(MBA)取得。世代・トレンド評論家のほか、マーケティングライター、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科客員教授などマルチな肩書を持ち、官公庁の審議会などの委員も多数務める。著書やテレビ出演を通じ、「おひとりさま」「草食系(男子)」などの言葉を世に広めた。
牛窪恵(うしくぼ・めぐみ)氏
1968年東京生まれ。91年日本大学芸術学部・映画学科(脚本)卒。大手出版社に勤務したのち、2001年にマーケティングを中心に行うインフィニティを設立、同代表取締役。19年立教大学大学院で経営学修士号(MBA)取得。世代・トレンド評論家のほか、マーケティングライター、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科客員教授などマルチな肩書を持ち、官公庁の審議会などの委員も多数務める。著書やテレビ出演を通じ、「おひとりさま」「草食系(男子)」などの言葉を世に広めた。

 人間は名前によって性格が変わるという米国の研究結果もあります。つまり、呼ばれ方・見られ方が性格や行動に影響する可能性があるのです。

 例えば、草食系世代といわれる人たちは、「草食系だから女性に興味がないんだろ」「ビールが飲めないんだろ」と勝手に決めつけられがちです。若い世代は「バブル世代はどうせラクして入社したんでしょ」と思っているかもしれません。

 「私は違う」と振り払える人はいいですが、「あぁ、そうなのか」と受け止めてしまう人は行動が制約されることも当然あります。ステレオタイプを基にして、レッテルを貼ることが一番良くない行為です。

 世代は進化しますから、当時の価値観をずっと変わらず持ち続けているわけではありません。バブル世代は消費好きですが、東日本大震災以降は明らかに所有欲が減りました。草食系世代はモノを買わないといわれていましたが、フリマアプリが出てくると、アプリを利用して循環型の消費に積極的になりました。このように、時代に合わせてどのように各世代が変遷したかを見ることが重要です。

次ページ 「生きてきた時代」を考える