2020年10月に菅義偉首相(当時)が「2050年までに温暖化ガスの排出を全体としてゼロにする。すなわち、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」(一部抜粋)と宣言してから約1年がたった。企業や自治体も次々に「カーボンニュートラル」の実現に向けて取り組むと表明している。
地球温暖化は長いこと議論されてきた問題だし、「省エネ」や「エコ」意識の大切さは以前からいわれている。なぜこのタイミングで世界的にカーボンニュートラルに向けた動きが活発になったのだろうか? 目標達成時期が2050年なのはキリがいいから? 温暖化ガスではなくCO2といわれることが多いのはどうしてだろうか? あらためて考えてみると色々な疑問が湧いてくる。
地球温暖化対策を話し合う第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が始まるのを控え、ますます注目されるカーボンニュートラル。しっかり理解しておかなければ、環境問題の本質も、これからの社会の変化も見えてこないのではないか。そう考えた私が環境省に取材を申し込んだところ、地球環境局総務課脱炭素社会移行推進室室長補佐(総括)の畠山寛希氏が応じてくれた。

まずは、そもそも企業や自治体、政府がなぜカーボンニュートラルに取り組んでいるのかを聞いてみた。
理由は大きく2つあるという。「まず1つは、集中豪雨、森林火災、大雪など世界各地で異常気象が発生していること、そしてそれが経済損失にもつながっているという危機感です」と畠山氏。「既に日本では、平均気温の上昇や大雨、台風などの被害が農作物や生態系に及んでいますよね」
確かに、異常気象が原因でジャガイモやタマネギの収穫が減り価格が高騰しているといった報道を毎年のように見聞きする。農作物の収穫量が減ると、生産者だけではなく、それらを加工する企業も打撃を受けることになる。地球温暖化による異常気象は、既に実害をもたらしているということだ。
もう1つは、企業が金融機関に投資や融資を促すためだという。「環境を守る意識や社会貢献もそうですが、金融の観点からも企業は持続可能なビジネスモデルへの見直しを求められています」と畠山氏は言う。環境、社会、企業統治を考慮した投資行動(ESG金融)が求められる中、金融機関は投融資先が気候変動対策に取り組んでいるかを重視するようになった。十分な取り組みができていない企業は自らの価値を目減りさせる可能性もあるという。
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