新人記者が専門家に素朴な疑問をぶつけるシリーズ。前回(「ジョブ型」の本質はどこにある? 新人記者が根掘り葉掘り)、企業がなぜ今ジョブ型の人事制度への移行を模索するのか、そのジョブ型への完全な移行は難しい状況にあることを日本総合研究所の山田久副理事長から解説してもらった。では、今後の日本企業の人事制度はどのようになっていくのか。さらに聞いてみた。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)

前回、雇用慣行が欧米と違う日本で純粋な「ジョブ型」に移行するのは難しいと解説していただきました。そのうえで「メンバーシップ型」は決して悪い面ばかりの制度ではないとおっしゃっていましたが、どんな点を評価しているのでしょうか。

山田久・日本総合研究所 副理事長(以下、山田氏):社員同士の信頼感やチームワークの向上につながりやすいことです。かつての日本の高度経済成長を支えた高品質な商品や技術は、社員が長年にわたって共に働いたことで築いた信頼とチームワークが根幹にあったように思います。

 例えば製造現場の多能工など、メンバーによる連携や熟練が大事な職種はメンバーシップ型が向いているでしょう。一方で、前回話題に上がった研究者などはジョブ型が適しているかもしれません。どんな雇用形態が向いているかは職種や業界によって変わるはずです。

 それから、海外のような「すぐに解雇されるかもしれない」という不安がないことも大きいですね。結果が出るまで何年もかかるようなプロジェクトや、失敗するかもしれないけれども会社として挑むべきプロジェクトに、社員が腰を据えて挑戦できます。

 事業の見直しなどで仕事がなくなった場合も、海外であれば解雇対象になりますが、メンバーシップ型であれば違う部署への異動になります。希望する部署かどうかはさておき、安定した収入が得られる安心は大きいですよね。

「ハイブリッド」でいいところを使い分ける

ここまでのお話を振り返ると、企業は年功序列による人件費上昇のストップや優秀な人材の確保のためにジョブ型の人事制度に切り替えたいけれども、今の日本の雇用慣行上、完全に切り替えるのは難しい……

山田氏:はい。

そして、これまでの日本企業のメンバーシップ型の雇用にもいいところがある、と。

山田氏:そうなんです。じゃあ、どうすればいいか、ですよね。

 メンバーシップ型とジョブ型のハイブリッドにしていくことが現実的だと私は主張しています。役割や職種、年齢などに応じて、メンバーシップ型とジョブ型のいいところを使い分けていくイメージです。

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