「最近はジョブ型の人事制度に移行する企業が増えてるよね」。働き方改革をテーマにした記事を検討する打ち合わせで、先輩記者が何気なくこう言った。確かに日経ビジネスや新聞などでも「ジョブ型」という文字をよく目にする。うん、うん、とうなずいていた新人記者の私に突然、こんな質問が飛んできた。「ところで、ジョブ型って分かる?」

(写真:PIXTA)
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 よく話題になる「ジョブ型」の人事制度。そのポストで果たすべき役割を明文化する「ジョブディスクリプション(職務記述書)」があって、そのジョブディスクリプションに適した人材を割り当てるやり方だということは理解している。では、ジョブディスクリプションさえあればその人事制度はジョブ型と言っていいのだろうか? いろいろな企業がジョブ型に移行したがるのはなぜ? あらためて考えると、どんどん疑問が湧いてくる。

 先輩記者に聞いてみると、「それなら、僕に聞くより専門家にきちんと聞いたほうがいい」とつれない言葉が返ってきた。2021年4月に日経ビジネス編集部に配属され、記者として働き始めた自分。確かに、大事な話を分かった気になってごまかしていては、記事も不正確になってしまう。そんなことを思っているうちに、近くにいたデスクが何かひらめいたようだ。「読者の中にもジョブ型を何となく理解している人がいるだろうから、新人らしい素朴な疑問もすべて専門家にぶつけて、その内容を記事にしてみよう」

 先輩記者に紹介してもらったのが、企業の人事制度に詳しい日本総合研究所の山田久副理事長だ。さっそく連絡を取ってみたところ、リモートでの取材に応じてもらえることになった。

今日はお忙しいところありがとうございます。

山田久・日本総合研究所 副理事長(以下、山田氏):はい、よろしくお願いします。「ジョブ型」について聞きたいそうですね。結構ややこしい話になりますよ(笑)。

それは覚悟の上です。理解できるまで粘らせてください!

山田氏:もちろんです。何でも聞いてください。

ジョブ型について調べていると、18年11月に日本経済団体連合会(経団連)が「メンバーシップ型」の雇用を見直すように呼びかけたのが大きなきっかけだったように思います。なぜこのタイミングだったのでしょうか?

山田氏:歴史を振り返ると、日本の企業の多くは「就社型」または「メンバーシップ型」の雇用で、年功に応じて賃金が上がる年功序列の賃金を採用してきました。ちなみに「メンバーシップ型」は分かりますか?

特定のポストを決めずに採用して、入社してから仕事を割り当てる形態ですよね。入社から定年退職までの終身雇用のイメージもあります。

山田氏:そうですね。新卒一括採用、終身雇用という慣習とも連動していることが多いです。

 今ジョブ型の議論が盛り上がっていることの理由の一つに、年齢構成が逆ピラミッド型になっている企業が多いことがあります。このまま年功序列を続けると、人件費がかさみすぎて企業は赤字になるかもしれません。

 これまで多くの企業は成果に応じて賃金を支払う「成果主義」などを導入して単純な年功序列の賃金から脱却しようとしてきたんです。ところが、年功序列の影響が色濃く残っているのが現状です。一度給料が高くなった社員の給料を減らすのはなかなか難しいですからね。

続きを読む 2/3 優秀な人材の確保も意識

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