日本最大の発電会社、JERAは2020年10月、再生可能エネルギーと同時に火力発電の燃料転換をする脱炭素戦略を発表した。欧州のように再エネ一辺倒でない戦略は、石炭火力に依存するアジア市場の事情も配慮している。しかし当初、その脱炭素戦略には外国人社外取締役から異論が出ていた。

英北部グラスゴーで開かれた第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)で演説する日本の岸田文雄首相(写真:REX/アフロ)
英北部グラスゴーで開かれた第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)で演説する日本の岸田文雄首相(写真:REX/アフロ)

 2021年11月2日、英グラスゴーで開催された第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)。壇上に立った岸田文雄首相は演説で宣言した。

 「アジアでは既存の火力発電を脱炭素化することも必要だ。日本は化石火力をアンモニア、水素などに転換するため、1億ドル規模の先導的な事業を展開する」

国際会議で初めて俎上に載った日本のエネルギー戦略

 化石燃料を使う石炭火力発電所のみならず液化天然ガス(LNG)火力発電所にも世界的な逆風が吹く中、火力発電所のアンモニア、水素への燃料転換が世界で初めて国際会議の場で俎上(そじょう)に載せられた瞬間だった。

 火力のアンモニア、水素への燃料転換は、20年10月、日本最大の発電会社、JERAが日本政府のカーボンニュートラル宣言に先駆けて発表した脱炭素戦略「ゼロエミッション2050」に盛り込んだものだ。JERAは東京電力ホールディングスと中部電力が折半出資して15年に設立された。国内の27カ所に火力発電所を保有し、日本の発電電力量の3割をまかなっている。

 経済産業省資源エネルギー庁の西田光宏戦略企画室長は「JERAは、火力の燃料転換でリードしている。日本がエネルギー政策を展開する上でも、火力を手掛けるJERAが先陣を切ったことは大きな励みとなる。国内の他の企業への横展開や海外へのノウハウ提供に大いに期待する」と、JERAの戦略が国のエネルギー計画に大きな影響を与えたことを示唆する。

国に先駆けて脱炭素戦略を打ち出した日本最大の発電会社、JERA(写真:北山宏一)
国に先駆けて脱炭素戦略を打ち出した日本最大の発電会社、JERA(写真:北山宏一)

外国人社外取が異論「なぜ再エネに振り切らないのだ」

 JERAの発表からさかのぼること約半年前の20年初頭。東京・日本橋のJERA本社で開かれた取締役会で、同社の2050年に向けた目標について議論が交わされていた。取締役会には、下部組織である経営会議で約半年かけ、中身を議論してつくった戦略の原案が提示された。

 「欧州では次々と洋上風力発電が建設され、もはや世界のエネルギーの主流は再生可能エネルギーだ。日本はただでさえ遅れている。なぜ、JERAは再エネに振り切らないのだ」

 こう異論を唱えたのは、欧米市場でエネルギー関連ビジネスに関わってきた外国人の社外取締役たち。米電力大手、NRGエナジーの元CEO(最高経営責任者)、デイビット・クレイン氏ら3人だ。懸念したのが石炭、LNGといった化石燃料を用いる火力発電を稼働し続けることだ。世界に先行して再エネが飛躍的に拡大してきた欧州を目の当たりにしてきた社外取締役にはJERAの戦略は時代遅れに思えた。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り2516文字 / 全文3711文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「脱炭素レボリューション」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。