世界トップの太陽光、重電大手が挑んだ風力──。環境関連市場で気を吐いた往時の姿は今の日本にない。競争力強化に不可欠な国内市場創出に失敗し、世界に後れを取った。失敗の本質は、世界の潮流を見失った官民の「内向き志向」にある。

 関門海峡の西方、北九州市の沖合に広がる響灘(ひびきなだ)を船で進むと、洋上に巨大な“竹とんぼ”が見えてくる。次世代浮体式洋上風力の実証施設「ひびき」だ。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトで、2019年5月に運転を開始した。

 日本には着床式洋上風力に適した水深50m未満の遠浅の海が少ない。そこで水深50~100mでも設置できる低コストの浮体式を開発しようと、ひびきプロジェクトは始まった。軽量簡素にするため、風車は主流の3枚羽ではなく2枚羽を採用。約50m四方の浮体は組み上げた状態でえい航しやすいよう喫水を浅く設定。海中の送電ケーブルに付着する生物をロボットで除去するなど、コスト低減に向けた様々な挑戦をしている。

北九州市の沖合に広がる響灘(ひびきなだ)で19年5月に運転を開始した次世代浮体式洋上風力の実証施設「ひびき」
北九州市の沖合に広がる響灘(ひびきなだ)で19年5月に運転を開始した次世代浮体式洋上風力の実証施設「ひびき」

輸入に頼る“日本式”

 だが、ひびきの肝心の風車は海外製に頼っている。ドイツのメーカーが設計し、ドイツと中国で生産。日立造船が設計・製造する浮体も、基本設計はフランス企業の手による。

 稼働状況を示す設備利用率は22%で、目標の30%台に届かない。コロナ禍もあり海外からの部品調達が滞ったためだ。「もっと早く、国の洋上風力拡大の方針が決まっていたら……」。関係者は唇をかむ。

 20年夏、風力関連企業と政府による官民協議会ができた。同年12月には、40年までに最大で出力45GW((1GW=100万kW、原子力発電約45基に相当)の洋上風力を導入する「洋上風力産業ビジョン」を発表。日本政府がやっと洋上風力の大規模導入にコミットした。だが「欧州に比べ、スタートラインで20年以上後れを取った」と三菱重工業出身で日本風力発電協会代表理事の加藤仁氏は指摘する。

 国内に風力市場が育たないまま、三菱重工、日立製作所、日本製鋼所などの主要メーカーが大型風力発電機の生産から軒並み撤退。「自国の『ホームマーケット』で技術と事業を磨き上げてきた海外メーカーと、国際市場で勝負するのは難しかった」と加藤氏はほぞをかむ。風力大手のヴェスタス(デンマーク)は三菱重工を、米GEは東芝を、自社開発の風車を日本市場に投入するための「パートナー」に据え、準備を進めている。

続きを読む 2/4 事業転換で遅れた太陽光

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