あえて「野心的な見通し」と強調し、経済産業省は第6次エネルギー基本計画(エネ基)の素案を7月21日に公表した。2030年の電源構成のうち、再生可能エネルギーの比率は36~38%にした。太陽光を中心に拡充し、前回計画の22~24%から大幅に上方修正した。ただ、環境分野の技術や事業で覇権を目指す欧州は再エネ率7割という「超野心的」な目標を掲げる。大言壮語と侮っていると、日本は環境対策の不備を理由に不利な通商政策を押しつけられる危険もある。彼我の戦略立案には、いったいどんな差があるのか。

日本は2030年の再エネ比率を36~38%に引き上げる(写真=PIXTA)
日本は2030年の再エネ比率を36~38%に引き上げる(写真=PIXTA)

 「子供や孫の世代のため、欧州は率先して動いていく」。欧州委員会のフォンデアライエン委員長は14日にこう宣言。欧州連合(EU)の新たな目標として、30年の電源構成に占める再生可能エネルギーを65%にするとぶち上げた。現在の約33%からほぼ倍増させることになる。なぜここまで大胆にできるのか。

 そのカギを握るのは「調整力」だ。電力は一瞬ごとに需給が一致していないと停電する危険性がある。供給が不足したときだけでなく、多過ぎても周波数が乱れ、発電機器が故障してしまう。新興国で停電が多いのは発電能力の不足だけでなく、需要予測と供給を常に合わせる「同時同量」を維持することが難しいためと言われる。再エネは日照や風の強さなどで出力が変動するため、単に設備を増やすだけではなく、それ以外の工夫も求められる。

再エネ助けたLNG

 例えば英国は分かりやすい事例だ。20年12月、電力供給に占める風力が初めて5割を超えた。ただ、21年1~3月は気象要因で風速が弱まり、再エネ全体の発電量は1年前から16%減の34.7テラワット時となった。この分を穴埋めすべく、天然ガス(LNG)を使うガス火力を同19%増の31.9テラワット時に拡大した。

 英国の石炭火力は脱炭素の方針に沿って同27%減、原発もメンテナンス要因によって同12%減だったので、ガス火力が“ピンチヒッター”となった。EU圏内のアイルランドも、これまで再エネの出力変動をガス火力で調整してきた。欧州は「悪者」である石炭を減らしつつも、同じ火力のLNGは使う。そして将来的には、その調整力を蓄電池や水素に置き換えていく戦略だ。

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