日本の再生可能エネルギーの切り札とも言える、洋上風力発電プロジェクトの入札が揺れている。2021年12月に実施した第1弾の入札では、三菱商事を中心とした企業連合が圧倒的に安い価格で、秋田・千葉県沖の3海域を総取りした。予想外の結果に、業界団体の日本風力発電協会(東京・港)は入札ルールの見直しについて提言書をまとめ、政府も動いた。ただ、業界は一枚岩ではなく、「安さか、早さか」で意見が割れる事態となっている。

(写真=PIXTA)
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 「JWPA(日本風力発電協会)様のご説明がございましたが、今日初めて(資料を)見ました。(協会の主張と)矛盾する説明をしたかもしれませんが、失礼いたしました」

 5月30日に開かれた政府の「洋上風力促進ワーキンググループ(WG)」の会議。三菱商事子会社、三菱商事エナジーソリューションズの岩崎芳博社長は、こう「謝罪」した。

 日本の洋上風力開発は、国が定めた海域について公募を行い、落札した事業者に最大30年間の占用期間を与える仕組みとなっている。21年12月に実施した「第1ラウンド」の入札は三菱商事が全3海域を落札し、政府は入札ルールの見直しを表明した。この日のWGは、政府の見直し案について、第1ラウンドに参加した8企業と、日本風力発電協会の意見を聞くために開かれた。

 政府の見直し案の骨子は、①運転開始時期が早い事業者を評価する、②複数海域に公募する場合、1事業者の落札上限をもうける、③価格に関する評価は、政府が定める基準を下回った事業者は、全て同点とする――となっている。

 業界団体である日本風力発電協会は冒頭に発言し、「早期運転開始」と「国内産業基盤形成」に重点を置くべきだとし、政府の見直し方針に肯定的な意見を述べた。対する三菱商事エナジーソリューションズの岩崎氏は、「価格面で差がつきづらくなり、制度の根幹が揺らぐ」などと見直し案の3骨子全てに反対した。同社は協会に加盟しているにもかかわらず、知らぬ間に「協会の意見」がまとめられていたことに対し、謝罪という形で皮肉ったわけだ。

 協会と相反する意見を表明したのは、三菱商事系だけではなかった。再エネ事業を手がけるレノバは政府の見直し案におおむね賛意を示したが、東京電力ホールディングスと中部電力が折半出資するJERAや九州電力系事業者は落札制限に反対した。早期運転開始の評価については、JERAや住友商事などが難色を示し、配点の減少を求めた。さらに価格評価については、九電系事業者が事業者間の競争促進に逆行しない設計を求めた。

 日本風力発電協会は、中小規模の再エネ専門企業から電力会社、総合商社まで幅広い企業が参画するため、「そもそも利害が一致することが難しい」(関係者)という事情もあるが、協会の提言が、業界の意見を集約できていなかったことが浮き彫りになった。

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