(前回は「会社丸ごとつくり変える日立、原動力は『変革か退場か』の危機感」)

食品業界の中で、いち早く気候変動リスクを開示してきたキリンホールディングス(HD)。地球温暖化によって、コストがどれだけ増大するかを試算してきた。環境対応の加速は一部投資家による短期的な利益追求のプレッシャーをかわし、長期保有の株主を増やす目的もある。

 「二酸化炭素(CO2)削減による節税効果は年間22億円になる」。キリンホールディングス(HD)の溝内良輔常務執行役員は、脱炭素が財務戦略にも関わると強調する。

 この試算は、地球の平均気温上昇を1.5度までに抑える目標に基づいて日本でも炭素税が導入された場合、2030年時点で同社が19年比50%のCO2を削減すると仮定してはじき出したものだ。こうした節税の効果だけでなく、同社は企業活動全体での定量分析を試みている。原料調達から世界各地の市場規模まで、温暖化による影響を金額に換算して予測し、対策を練る。

 ベースとなっているのは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による開示基準だ。国際組織の金融安定理事会(FSB)によって定められ、具体的な指針が出たのは17年。キリンHDで北米ビール事業とともに会社全体の環境対策を担う溝内氏は、「ビールやワインの原料が気候変動リスクにさらされる我々にこそ重要だ」とすぐ着目した。

キリンビール岡山工場で生産するビール「一番搾り」。各工程でエネルギー利用の効率化を進め、エコなお酒を目指してきた(写真=キリンホールディングス提供)
キリンビール岡山工場で生産するビール「一番搾り」。各工程でエネルギー利用の効率化を進め、エコなお酒を目指してきた(写真=キリンホールディングス提供)

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