(前回は「炭素減らせばおのずと節税、キリンが狙うESGの実利」)

 食品業界を支える「縁の下の力持ち」としてB to Bでは有名な、不二製油グループ本社(以下、不二製油)。チョコレートをはじめ菓子や乾麺、化粧品にも使う植物性油脂の国内最大手で、自ら手がける業務用チョコは世界大手でもある。ここ数年は脱炭素経営でも注目を集めているが、ファンをひやりとさせる出来事が起きた。

 「ESG(環境、社会、ガバナンス)専門の役員職を廃止します」。2022年2月上旬、環境経営に敏感な人々をちょっと騒がせるニュースが駆け巡った。不二製油が19年から設けてきた「C“ESG”O(最高ESG責任者)」をやめると発表したのだ。

 今回、日経ビジネスが21年12月~22年1月に集めたアンケートでも、多くの金融関係者やシンクタンク研究者から「不二製油はいち早く専門の役員まで置いて脱炭素に対応してきた」と感心する声が寄せられていた。その企業が自らはしごを外してしまったのか。同社に問い合わせると、「真意は真逆です」という答えが返ってきた。

すでに第2ステージ

パーム油の調達で、サプライチェーンの把握が必須となっている(不二製油が合弁会社を持つマレーシアでの収穫風景、写真=不二製油グループ本社)
パーム油の調達で、サプライチェーンの把握が必須となっている(不二製油が合弁会社を持つマレーシアでの収穫風景、写真=不二製油グループ本社)

 不二製油の酒井幹夫社長はこのところよく、「すでに脱炭素経営の第2ステージに入っている」と社員に話している。最高ESG責任者は、まだESGという言葉が今ほどお茶の間まで知られていなかった頃、各部門に意識を浸透させるべく専門の役職として設けた。

 カカオやパーム油を調達する会社として、海外取引先での環境対策は脱炭素だけでなく人権保護や生物多様性にもつながる重要テーマだ。C“ESG”Oを務める門田隆司上席執行役員は3年かけて「長期的な持続可能性」という軸を社内の各部署に伝えてきた。

 その役割を達成できたと判断し、22年4月から門田氏はCTO(最高技術責任者)が本職となり、ESGは兼務での担当分野という位置付けになる。役員がESGの号令をかけるというより「全社員がESG推進を率先する」という。

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