個人投資家の増える昨今だが、「株高につられて始めたものの、期待ほど儲(もう)かっていない」「思わぬ損をしてしまった」という嘆きの声を聞くことがある。なぜ、市場が活況にもかかわらず、たいした結果を残せないのか。それは「投資の原理原則を理解していないから」と、経済コラムニストの大江英樹氏はいう。
 今回は、手元にある資産のうちどれだけを投資に回すのがよいかについて。よく「投資は無くなってもいい額で」などといわれるが、具体的には……? 『あなたが投資で儲からない理由』(日本経済新聞出版)より抜粋する。

「投資は無くなってもいいお金で」の意味

 「投資は無くなってもいいお金でやりなさい」という人がいる。まあ“無くなってもいいお金”なんてあるわけないのだが、いわんとすることは「もしそれが全部無くなっても生活に支障をきたさない範囲内で投資をしなさい」ということだろう。

 これは間違ってはいない。もちろん、信用取引のようにレバレッジを掛けるとか、あるいは買った株の企業が倒産するといったよほどのことがない限り、投資したお金が全部なくなるということはないが、心づもりとしてはそれぐらいの余裕を持ってやりなさいということだろう。つまり投資をするにあたっては、決して「無理をしてはいけない」ということなのだ。

 価格変動のあるリスク商品、すなわち株式や投資信託に自分が持っている金融資産の何割を投資するかは、その人のリスク許容度がどれくらいあるかによるため、その割合は人によって異なる。

 仮に自分の金融資産が全部で1000万円だとして、その半分500万円をリスク商品に投入するとしよう。筆者なら、この500万円はあくまでも「リスク商品に投入する上限額」と考える。

「リスク商品用」に分けた額をすべて投資に回さず、何割かはキャッシュで持っておく(写真:Olivier Le Moal/Shutterstock.com)
「リスク商品用」に分けた額をすべて投資に回さず、何割かはキャッシュで持っておく(写真:Olivier Le Moal/Shutterstock.com)

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