コロナ禍に対応できないと言われた病院に改革の動きが見えてきた。独自の計数管理や徹底した業務改善で強い病院に生まれ変わり始めている。日本の医療を再生するにはもう一段の工夫が要る。ビジネスモデルを改革すべきだ。

 「死ぬかもしれないのに、何でかかりつけ医は診てくれないんですか。なぜ入院させてもらえないんですか。心が痛みませんか」

 神戸市で訪問看護をする北須磨訪問看護・リハビリセンターの藤田愛所長は今年4月末、看護をした40代の新型コロナ患者の男性の言葉が忘れられないという。男性は血中酸素濃度が90%を割り、体温は38.9度。入院しようとしたものの、病院はどこも病床が空いておらず、かかりつけ医はコロナを恐れたのか、診てくれなかった。藤田所長は保健所の依頼で訪問看護を引き受け、医師と共に男性の自宅で酸素吸入をし、ステロイドを投与した。

 そのかいあって、男性はその後回復したが、医療への不信は最後まで拭えないようだった。男性の子供らしい幼児が隣の部屋で走り回る気配を感じながら、藤田所長は黙って男性の言葉を聞くほかなかったという。

立ち向かう医師たちがいる

 振り返るとこう感じている。「確かに新型コロナの感染は落ち着いてきました。でも、ほんの数カ月前は多くの人が入院できなかった。感染がもしまた拡大すれば、いつでもあの状態に戻りかねないんです」

 今、契約者の中にコロナ患者はいなくなった。しかし、今年3月半ばから5月末までに看護を引き受けたコロナ患者51人のうち、入院できたのはわずか10人。「あの危機だけは繰り返さないように」。訪問看護を続けながら気の緩む日はないと打ち明ける。

 新型コロナが明らかにした医療の逼迫という弱点に医師たちは今、どう立ち向かおうとしているのか。

 まず必要なのは日本医療の“弱点”を短期的に乗り越える策だ。日本の病院の約8割は民間で、そのうちの約6割が中小。民間の赤字比率も約4割に達する。「脆弱」な体質がコロナ禍への対応をしにくくしていることは「水際対策、医療逼迫…改革が進まない コロナで露呈した不安」でも指摘した通りだ。だからこそ「中小医療機関にもできる対策」が重要になる。

 「新型コロナに対応するための知見とノウハウを備えること。そして計数管理をしっかりすること」。これが何より重要だというのは、関西と関東を中心に10病院と介護施設を運営する伯鳳会グループ(兵庫県赤穂市)の理事長、古城資久医師だ。

伯鳳会グループの赤穂中央病院で重症化した患者に挿管するため対応する医療従事者
伯鳳会グループの赤穂中央病院で重症化した患者に挿管するため対応する医療従事者

 伯鳳会は昨年6月から今年1月までにグループのうち200床以上の5つの病院で計63(5月末時点)のコロナ病床を設け、計680人(4月末時点)の患者を受け入れた。最初に受け入れを始めた東京曳舟病院はもともと感染症指定医療機関だったこともあり、いち早く対応を始めたが、他の4病院も今年1月までに開始した。その背景には、医療機関としては珍しいほどのきめ細かな計数管理があった。

続きを読む 2/5 M&A理事長の計数管理経営

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