医療現場では新型コロナとの闘いを通じ、不安ばかりが浮き彫りになっている。水際対策は脆弱でウイルスが次々に侵入しかねない。医療逼迫の対策も進まない。次のコロナを迎えたらどうなるか。医療改革が進まなければ、命の選別さえ迫られる。

 「担当者が濃厚接触者に認定されて待機しているので詳しいことは……」。大阪府泉佐野市の職員が沈みがちな声で答えた。

 東京五輪・パラリンピックの事前合宿で6月19日に来日したウガンダ選手団9人のうちの1人が、到着した成田空港の検疫で新型コロナウイルス陽性と判明した。残る8人はホストタウンである泉佐野市へ貸し切りバスでそのまま移動したが、4日後の23日、選手団の別の1人が新たに陽性と分かり、バスの運転手や市の担当者が濃厚接触者として自宅などで待機することになったのだ。最初の陽性者は後にインド型(デルタ株)と判明し、2人目も同じとみられている。

日本への入国・帰国時の水際対策への不安は根強い……(写真:PIXTA)
日本への入国・帰国時の水際対策への不安は根強い……(写真:PIXTA)

 「打つ場は診療所か、大手町か職域か ワクチン狂騒曲が意味するもの」で見たように、ワクチン接種は徐々に進み始めた。だが、神戸市で7月2日にワクチン不足が表面化するなど懸念が残る。コロナをめぐる不安の種はほかにもある。その一つがウガンダ選手団の陽性者すり抜けが示す水際対策だ。

 水際の漏れは重大な意味を持つ。とりわけ難題は4月ごろから感染が拡大した変異型ウイルスだ。最初に広がった英国型(アルファ株)は従来型に比べ感染力が約1.3~1.5倍、次いで拡大したインド型はさらに強力な感染力を持つという。ただ「ファイザー製のワクチンなら2回接種すれば、ほとんどの人で変異型への防御力はつく」(宮坂昌之・大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授)といわれる。

 つまり、変異型の感染拡大とワクチン接種はスピード競争になっているのだ。だからこそ水際対策は極めて重要になる。しかしコロナ禍で1年半たった今も、国の対応は後手に回り続ける。

 国は、ウガンダ選手団2人目の陽性が判明した後、水際対策の甘さに対して地方から相次いだ懸念の声を受ける格好で、7月から新たな対応を取り始めた。入国した選手団の中に陽性者が出た場合、来日の飛行機内などでその陽性者と濃厚接触の疑いがある人は、空港から国が用意した別の車で合宿地などへ移動させるというものだ。

 だが、これは五輪だけの問題ではない。もともと、水際対応として空港の検疫で陽性者が判明すると、「機内でその陽性者と同列か前後2列の乗客情報を確認し、その乗客の自宅や宿泊先のある自治体に連絡する。その上で地元自治体の保健所が濃厚接触者かどうかを判定する」(厚生労働省検疫所業務管理室)ことになっている。

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