車載半導体の不足により、中国の自動車業界では予想もしなかったようなことが起きている。ドイツ・アウディのディーラーは「車齢1年の中古車を新車購入額で買い取る」と破格の取引条件を打ち出した。中国新興メーカーの上海蔚来汽車(NIO)の幹部は、短文投稿サイトに「新車の納期が延び、ショールームの展示車も売り切れた」と書き込んだ。

 2020年末から顕在化した世界的な半導体不足は、中国の自動車業界にも大きな影響を及ぼしている。コンシューマーエレクトロニクス向けの半導体の需要増が車載半導体の生産を圧迫しただけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って東南アジアにおける車載半導体の生産が停滞したことも大きな要因となった。その結果、自動車メーカーが減産に追い込まれ、新車の供給不足が問題になっている。

 自動車に搭載される半導体の数は増える一方だ。プログラムを実行するコンピューターとして使う半導体だけでも、エンジンや変速機を制御するマイコン、車体のエアコンや窓を制御するマイコン、先進運転支援システム(ADAS)の複雑な処理を実行するシステムオンチップ(SoC)など、様々なものがある。データを記憶するメモリー半導体や、モーターなどに供給する電力を制御するパワー半導体もある。乗用車の場合、ガソリンエンジン車には1台当たり100~300個、電気自動車(EV)には同500~600個の車載半導体が使われるとされる。

中国・比亜迪(BYD)が開発したパワー半導体と、パワー半導体を組み込んだ電力制御モジュール
中国・比亜迪(BYD)が開発したパワー半導体と、パワー半導体を組み込んだ電力制御モジュール

米国、日本で止まり、マレーシアでも

 新型コロナの感染拡大初期は、自動車需要が減少する一方、リモートワークや巣ごもりのためにパソコンやゲーム機などの需要が伸びた。そこで半導体メーカーがコンシューマーエレクトロニクス向け半導体の生産を優先したことが、足元の車載半導体不足の供給不足を招くきっかけとなった。

 その後、2021年2月には米テキサス州に寒波が襲来して計画停電を行った影響で韓国サムスン電子や独インフィニオンテクノロジーズ、オランダNXPセミコンダクターズの半導体工場が稼働を停止。翌3月にはルネサスエレクトロニクスの主力生産拠点、那珂工場(茨城県ひたちなか市)で火災が発生し、稼働が停止した。

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この記事はシリーズ「湯進の「中国自動車最前線」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。