電気自動車(EV)大手の米テスラは9月30日、米カリフォルニア州で「AI(人工知能)デー2022」を開催し、ヒト型ロボット「オプティマス(Optimus)」の試作機を公開した。自動運転技術のノウハウやセンサー技術を活用するこのロボットを2万ドル(約300万円)で販売することを目指すという。

 世界の自動車業界で株式時価総額トップに立つテスラは人間の代わりにロボットが肉体労働や単純作業を担う未来図を示し、テック企業の代表的な1社としての実力および成長性を投資家に大いにアピールした。

 だが、足元ではEVの品質問題が依然多発している。テスラは8月19日、パワーウインドーの問題により米国で約110万台のリコール(回収・無償修理)を発表した。2021年12月から22年9月までに同社が届け出たリコールの対象台数は米国で計215万台を超えた。

 テスラにとって最大の市場である中国でも同じ期間に4回のリコール(対象台数46万台)に踏み切った。CPU(中央演算処理装置)やヒートポンプの膨張弁の不具合、パワー半導体の異常などがテスラ車の安全性に影を落としている。テスラはオンラインによるソフトウエアの更新を無料で行い、危険性を排除するという。

中国・上海市内のテスラ販売店。テスラは21年12月以降、中国でも相次いでリコールを実施している(写真:CFOTO/アフロ)
中国・上海市内のテスラ販売店。テスラは21年12月以降、中国でも相次いでリコールを実施している(写真:CFOTO/アフロ)

 かつては、独フォルクスワーゲン(VW)の中国合弁、一汽VW汽車が販売した「サギター」のギアボックスの欠陥、米フォード・モーターの「フォーカス」のトランスミッション(変速機)の不具合などが中国の主要マスコミで取り上げられ、外資系メーカーをやり玉に挙げて批判することも多かった。

 21年4月に開催された「上海モーターショー」では、ブレーキの不具合を巡ってテスラ車オーナーが抗議する動画がSNS(交流サイト)で拡散される事態が発生。その後の対応のまずさにより、同オーナーの不満を解消できず、22年3月には中国の人民法院(裁判所)が民事事件としてテスラに対する訴訟を受理することとなった。

地元サプライヤーの底上げに貢献

 では、繰り返されるリコールによって、中国において「テスラたたき」の風潮が広がり、市場における優位性が傷付くことになるのか。答えは「ノー」だ。

 なぜか。1つ目の理由は、中国におけるテスラの生産拡大が中国EV産業の競争力を高めていることだ。「モデル3」と「モデルY」を生産している上海工場の出荷台数は21年に48.4万台、22年は1~9月だけで48.4万台(うち輸出向けは16.3万台)に達した。

テスラが上海市に構える工場「ギガファクトリー」(写真:Featurechina/アフロ)
テスラが上海市に構える工場「ギガファクトリー」(写真:Featurechina/アフロ)

 テスラによる部品の現地調達率は既に95%を超えている。それが地場サプライヤーの技術向上につながることで中国におけるEVサプライチェーンのさらなる高度化が期待されている。

 2つ目には、テスラの存在が、中国政府が外資系の優良メーカーを引き込むことによって地場の自動車メーカーにEVの「量から質」への転換を促す方針に合致していることがある。

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