中国のスマートフォン大手、小米(シャオミ)が9月1日に電気自動車(EV)事業を手掛ける新会社「小米汽車」を設立したと発表した。既にEV工場の建設に向けた交渉に入っているという。2021年3月にEV事業への参入を発表し、わずか半年で工場建設の手前までたどり着いたシャオミにどんな勝算があるのか。

2020年8月、シャオミの「次の10年」について演説した雷軍董事長兼CEO
2020年8月、シャオミの「次の10年」について演説した雷軍董事長兼CEO

 シャオミが北京で設立した小米汽車の資本金は100億元(約1700億円)で、雷軍董事長兼最高経営責任者(CEO)が新会社のトップを兼任する。今後10年間で100億米ドル(約1兆1000億円)を投資する計画を明らかにした。

 EV工場の建設をめぐり、シャオミは第一汽車の本拠地である吉林省長春市や、湖北省武漢市の政府と交渉を続けている。北京ボルクヴァルトや北京現代の工場取得に向けて動いているとの報道もあった。厚待遇で500人規模のエンジニアを集め、自動運転の「レベル4」(特定の条件下で運転を完全自動化する)技術の研究開発にも力を入れている。

 ガソリンエンジン車からEVへの移行によってクルマの内部構造が大きく変化する中、電子機器製造の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業がEV事業への参入準備を進めているほか、米アップルは「アップルカー」の生産に向けて複数の自動車メーカーと交渉しているとされる。そこにシャオミも加わり、クルマの「スマホ化」の動きが加速しそうだ。

シャオミがEV事業参入を急ぐ理由は……

 そもそも、なぜシャオミがEV事業に参入するのだろうか。雷軍CEOが決意を固めた理由として以下の3点が考えられる。

 第1に、スマホ市場の競争環境の変化だ。スマホ市場でシャオミが競うアップル、中国・華為技術(ファーウェイ)、韓国サムスン電子はいずれもEV関連の事業に乗り出している。アップルは前述の通りEV事業への進出を計画しているとされる。ファーウェイは車載電子技術や自動運転技術の開発に力を入れるほか、中国大手自動車メーカーの長安汽車とEVの新ブランドを立ち上げる予定だ。サムスン電子はグループ会社に車載電池大手のサムスンSDIを持つほか、米自動車部品大手ハーマン・インターナショナルを傘下に収めた。サムスン電子がEV市場に進出するとの観測は絶えない。

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