中国が2019年から導入した「ダブルクレジット規制」。罰則付きの規制によって、自動車メーカーに燃費の改善と電気自動車(EV)生産の拡大を促す制度だ。規制が年々厳しくなるなか、ガソリン車の販売が好調な日系メーカーに対応コストが重くのしかかっている。
中国の自動車国家基準を策定する唯一の機関、中国自動車技術研究センター(CATARC)は8月17日、電気自動車(EV)などの新エネルギー車(NEV)の生産義務に関する「クレジット」の単価が2021年中に3500元(約5万9千円)に上がるとの予測を発表した。
21年4月には、独フォルクスワーゲン(VW)の中国での合弁生産会社である一汽VWが、EV大手の米テスラからクレジットを購入すると報じられた。「NEV規制」による20年の生産義務を達成できなかったためだ。中国の新車販売で長年にわたり首位を維持しているVWも、EVシフトの遅れで規制対応のコスト増加に追い込まれたわけだ。
中国はNEV規制に加えて、自動車メーカーの平均燃費に関する「CAFC(Corporate Average Fuel Consumption)規制」も設けている。NEV規制とCAFC規制の「ダブルクレジット規制」が、中国でのガソリン車の販売が堅調な日本の自動車メーカーに対して電動化戦略を加速するよう迫っている。

燃費低減とNEV比率増加の両面から規制
中国のダブルクレジット規制について解説しよう。
14年からEVシフトを国策として推進した中国では、購入時の補助金制度と並行する形で、交通規制の対象外となるEV専用ナンバープレートの配布や、購入税の免除といった需要喚起策を実施してきた。EV生産に参入する地場メーカーが増加した一方で、大手外資系自動車メーカーの多くは中国のインフラ事情や消費者の嗜好を勘案して「EVシフトは進められない」と判断した。
その結果、18年の中国の新車販売台数に占めるEVの割合は4%にとどまった。コストや商品力の面でガソリン車を逆転できなかった。
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この記事はシリーズ「湯進の「中国自動車最前線」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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