日中の自動車メーカーやサプライヤー、電池や材料のメーカーとの幅広い接点を持つ湯進氏が中国の自動車産業の今を読み解く本連載。第2回は、世界最大の新エネルギー車(NEV)市場となった中国で、電気自動車(EV)への需要がどのように変化しているのかを分析する。

 「毎日お客様から電池の出荷についての催促がある。必死に対応しているところだ」。世界最大の車載電池メーカー、中国・寧徳時代新能源科技(CATL)のロビン・ツォン会長は2021年5月に開いた株主総会で、旺盛な需要が続く状況をこう語った。CATLは18年に深圳証券取引所に上場。それから約3年で時価総額は約22兆円になった。車載電池で競合するパナソニックの約7倍の規模だ。

 こうした車載電池の需要拡大をけん引するのが、中国における新エネルギー車(NEV)の販売拡大だ。中国自動車工業協会によれば、中国のNEV保有台数は5月末時点で約580万台となり、世界全体の約50%に達したという。

 中国政府は14年から電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)を中心とするNEVの普及を国策として推進。12年に1万2000台だった中国のNEV販売台数は、20年に136万7000台まで増えた。21年は1~6月だけで120万6000台に達しており、通年では240万台になる見込みだ。

中国の新エネルギー車(NEV)市場の見通し
中国の新エネルギー車(NEV)市場の見通し
(出所:中国汽車工業協会の発表より筆者作成)

 NEVの販売台数で世界トップの中国だが、総量だけで見ていると市場を見誤る可能性がある。中国のNEV市場のトレンドがどのように変化してきたのか、そして今後どのように変化する見通しなのかを解説していく。

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