資源会社から完成車メーカーへと連なる中国の電気自動車(EV)サプライチェーン(供給網)で、利益の争奪戦が新たな局面を迎えた。完成車メーカーや電池メーカーがコスト削減や原材料の安定調達へ手を打ったことで、車載電池の価格を押し上げてきた主要材料の価格が下落に転じた。完成車メーカーにとって事態は好転したといえる。
中国では2022年に電気自動車(EV)の新車販売台数が536万5000台に達し、新型コロナウイルス禍前の5.5倍と急速に伸びている。ところがEVを生産・販売する完成車メーカーの収益性は必ずしも高くないのが実情だ。
主要上場企業の収益状況を分析して見ると、EVサプライチェーン(供給網)の川上から川下までの明暗が浮き彫りになった。22年1~9月期の売上高純利益率平均は電池メーカー主要5社で5.3%となり、最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)が最も高く8.3%だった。
完成車メーカーでは国有大手の長安汽車、EV⼤⼿の⽐亜迪(BYD)など主要5社の平均が5.2%にとどまった。⼀⽅、正極材、負極材、セパレーター(絶縁材)、電解液などの主要部材メーカー(上海エナジーなど13社平均)は17.0%となり、さらに上流に位置するレアアースの鉱⼭採掘企業や炭酸リチウム(正極材の主要材料)のメーカー(天斉リチウムなど5社)は37.5%に達した。

CATLが3月9日に発表した22年12月期の売上高純利益率は1~9月期に比べてやや改善し9.3%となった。サプライチェーンの上流ほど利益率が総じて高いという傾向は明らかだ。背景にあるのは車載電池の原材料価格の高騰だ。EV市場の拡大により電池の需給が逼迫していたにもかかわらず、新型コロナウイルス禍で炭酸リチウムの供給は減少。これによって電池の原材料価格が押し上げられたのだ。
CATLへの不満も飛び出す
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この記事はシリーズ「湯進の「中国自動車最前線」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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