雪上や氷上の熱い戦いが繰り広げられてきた北京冬季五輪。その選手や関係者の移動手段として約1000台もの燃料電池車(FCV)が投入されている。中国政府や地方政府もFCVの普及やサプライチェーン構築に向けた推進策を打ち出している。電気自動車(EV)の普及に積極的な「EV大国」の中国に、FCVブームの兆しが見えてきた。

トヨタ自動車の燃料電池マイクロバス
トヨタ自動車の燃料電池マイクロバス

 2月4日に行われた北京冬季五輪の開会式。国名が記されたパネルを並べた雪の結晶のオブジェに、聖火リレーの最終走者が運んできたトーチを差し込んで聖火台を完成させる演出が話題になった。この聖火をともし続けるために供給されているのは水素燃料だ。

 水素燃料は北京冬季五輪における人の移動も支えている。選手や関係者の移動手段として約1000台もの燃料電池車(FCV)が投入された。中国商用車大手の北汽福田汽車は崇礼競技区に水素バス515台など、トヨタ自動車は水素マイクロバス「コースター」107台、2代目「ミライ」140台を供給した。

 水素を燃料とすることで、走行距離1万km当たりの二酸化炭素(CO2)排出量を約11.8トン削減できるという。中国政府は五輪を舞台に、カーボンニュートラルに向けたグリーンエネルギー活用の取り組みを世界にアピールしている。

 走行時にCO2を発生させないFCVは電気自動車(EV)に比べて航続距離が長く、燃料充填時間が短い利点がある。また、EVは寒冷地や山地で電池性能が低下しやすい課題があるため、気温が低い北京冬季五輪会場ではFCVが最適だった。

 こうした国家レベルの産業推進策の実行と歩調を合わせるように、地方政府も水素エネルギーの活用やFCVの普及を推進する計画を相次いで打ち出している。EVの普及に積極的な中国だが、FCVも急速に普及する可能性がある。

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