世界最大の自動車購入国であり、世界最大の自動車生産国でもある中国。中国の自動車産業は着実に力をつけてきた。さらに、電動化や自動運転などの「CASE」の進展とともに、部品やソフト、製造など様々な分野で中国企業の存在感が増している。名実ともに自動車産業の中心地となろうとしている中国で今、何が起きているのか。日中の自動車メーカーやサプライヤー、電池や材料のメーカーとの幅広い接点を持ち、『中国のCASE革命―2035年のモビリティ未来図』を著した湯進氏が読み解く。(この連載の論考は筆者の見解であり、所属組織とは無関係です)
(写真:Shutterstock)
シリーズ
湯進の「中国自動車最前線」

25回
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上海自動車ショーで見えた中国市場の未来 EV化で「すみ分け」崩壊
「自動車業界の新時代を抱きしめて」をテーマとした上海国際自動車ショー(2023年4月18日~27日)では、初披露車約150モデルの実に約3分の2を、電気自動車(EV)を中心とする新エネルギー車(NEV)が占めた。世界の自…
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空前の値下げ合戦が進行中 不振の中国新車市場、テスラが先手
中国の新車市場で激しい価格競争が巻き起こっている。年明け以降、電気自動車(EV)、ガソリン車ともに値下げする動きが相次ぐ。かつてないほどの価格競争が生じた背景には、新車市場が低迷する中、電池材料価格の下落や排ガス規制の新…
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最後に笑うのは誰か 中国EVサプライチェーンの利益争奪に新展開
資源会社から完成車メーカーへと連なる中国の電気自動車(EV)サプライチェーン(供給網)で、利益の争奪戦が新たな局面を迎えた。完成車メーカーや電池メーカーがコスト削減や原材料の安定調達へ手を打ったことで、車載電池の価格を押…
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中国NEVは普及へ分水嶺を越えた 値上げでも成長する4つの事情
中国で電気自動車(EV)を中心とする新エネルギー車(NEV)が快走している。2022年の販売台数は前年比9割増の約690万台と新車市場の25%に達した。足元では値上げや購入補助金の終了などのマイナス材料が指摘されているが…
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中国自動車市場の開拓者、フォルクスワーゲン変調の3つの理由
中国の自動車市場で、長くトップに君臨してきた独フォルクスワーゲン(VW)が変調を来している。ほかの外資系自動車メーカーや中国地場メーカーの追い上げを許し、カテゴリー別トップなどの座を明け渡している。何が起きているのか
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逃げるテスラ、猛追するBYD EVは米中メーカーの2強時代に
中国の大手電気自動車(EV)メーカー、比亜迪(BYD)は、EVとプラグインハイブリッド車(PHV)を中心とする新エネルギー車(NEV)の累計出荷台数が中国企業として初めて300万台に到達したと発表した。BYDの急成長によ…
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中国自動車需要の拡大に期待 習氏の政治報告を読み解く
北京で10月に開かれた中国共産党の第20回全国代表大会で、習近平(シー・ジンピン)総書記は政治報告を行い、今後の国の発展戦略を示した。「中国式現代化」という新たな政治スローガンが登場した報告を読むと、3期目となる習政権の…
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リコール続きのテスラに逆風吹かず 中国政府のEV戦略に救われる
電気自動車(EV)大手、米テスラによるリコール(回収・無償修理)が相次いでいる。同社にとっての最大市場である中国での対象台数は計46万台に達した。それでも「テスラたたき」の逆風が吹き荒れることがないのは、中国政府のEV戦…
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百度が中国で完全無人タクシー 李CEO「将来、運賃は半額に」
中国の百度(バイドゥ)が重慶市と武漢市で中国初となる完全無人運転タクシーのテスト営業を開始した。車の操縦をAI(人工知能)にすべて委ねる新たな段階に入る。中国における官民挙げての自動運転技術の開発が一段と加速しそうだ。
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テスラ「4680」対CATL「麒麟」 EV電池の開発競争激しく
電気自動車(EV)用電池の開発競争が激しくなっている。足元では米テスラが採用を増やす円筒形リチウムイオン電池「4680」が注目を集めるが、車載電池で世界首位の中国・寧徳時代新能源科技(CATL)はそれをしのぐ性能の電池を…
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「モデルYに勝つ」 テスラに挑むバイドゥ「ロボットカー」の正体
中国のネット検索最大手、百度(バイドゥ)傘下の電気自動車(EV)メーカーが第1号モデル「ROBO-01」を発表した。大手テック企業が世に送り出そうとしているEVとはどんな車なのか。
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上海発の中国自動車危機 半導体・部品供給の寸断で車生産は綱渡り
中国では3月以降、新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の感染が拡大している。高齢者のワクチン未接種者が多いため、中国政府は「ゼロコロナ政策」を実施し、ロックダウン(都市封鎖)など強い規制を採用した。その影響が直撃し…
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固体電池をいち早く搭載 「中国版テスラ」のNIO、24年黒字化へ
中国の新興EV(電気自動車)メーカー、上海蔚来汽車(NIO)が2022年3月28日、フラッグシップと位置づけるEVセダン「ET7」の納車を開始した。米テスラのような高級路線を進むNIOは、最新の技術を搭載する高級車を次々…
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「EV輸出大国」へひた走る中国、レアメタルの調達難が試練に
ロシアによるウクライナへの侵攻により、ロシアへの依存度が高いパラジウムやニッケルといった自動車部品や車載電池の生産に欠かせないレアメタルの調達懸念が強まっている。昨年から原材料価格の上昇や車載半導体の不足が各国の自動車関…
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北京冬季五輪に燃料電池車1000台 EV大国・中国でFCVブーム?
雪上や氷上の熱い戦いが繰り広げられてきた北京冬季五輪。その選手や関係者の移動手段として約1000台もの燃料電池車(FCV)が投入されている。中国政府や地方政府もFCVの普及やサプライチェーン構築に向けた推進策を打ち出して…
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電池交換式EVに照準定めたCATL 秘策「チョコレート電池」とは?
中国の車載電池最大手、寧徳時代新能源科技(CATL)が1月18日、電気自動車(EV)向けの電池交換サービス「EVOGO(楽行換電)」を始めると発表した。翌19日にはCATLの供給先である中国自動車大手、吉利汽車が電池交換…
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激動の2021年、湯進が選んだ中国自動車業界10大ニュース
車載半導体の不足や電力消費量の制限などが自動車生産に与える影響が深刻になってきた2021年の中国自動車業界。それでも、景気回復や消費促進政策の効果などにより、新車販売台数は前年比3%増の2600万台に達し、4年ぶりのプラ…
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「航続距離1000km」も 広州ショーに見る中国のEVシフト加速
2021年11月28日まで10日間にわたって広東省広州市で開催された「広州国際汽車展覧会(広州モーターショー)」。地場の大手自動車メーカーが電動化やコネクテッドに注力する姿勢を鮮明にし、これまで電動化に出遅れてきた日系自…
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中国も悩む車載半導体不足 「センサー後付け」「キーは1個」も
車載半導体の不足により、中国の自動車業界では予想もしなかったようなことが起きている。ドイツ・アウディのディーラーは「車齢1年の中古車を新車購入額で買い取る」と破格の取引条件を打ち出した。中国新興メーカーの上海蔚来汽車(N…
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テスラやトヨタも頼るEV電池の巨人、中国CATLが狙う覇権
中国の車載電池最大手、寧徳時代新能源科技(CATL)。電気自動車(EV)への移行が加速する中、国内外で積極投資を続けている。その競争力はどこから生まれているのだろうか。
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従業員の希望に応じて70歳まで働く場を確保することを企業の努力義務として定めた、改正高齢者雇用安定法が2021年…
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