Non-Fungible Tokenの略で、「非代替性トークン」と訳される「NFT」。ブロックチェーン上の識別子を持ったトークンのことを差し、デジタルデータに活用することでデータの真正性と所有者を明らかにし、譲渡・売買を可能にする仕組みだ。2021年3月には、米ツイッターの共同創業者でCEO(最高経営責任者)のジャック・ドーシー氏が2006年3月21日(日本時間では22日)に投稿した初ツイートに、約291万ドル(約3億2000万円)もの値段がついて注目を集めた。

 デジタルの世界では複製が簡単。これまでクリエーターの努力がないがしろにされることが数多く発生していたが、NFTの仕組みを用いれば制作日時や所有権を記録でき、売買されるたびに相応の報酬が入ってくる。

 このNFTが音声市場にもたらす影響は大きい。音声市場の拡大を一気に加速させる可能性を秘めている。音声メディア「Voicy(ボイシー)」を運営するVoicy代表取締役最高経営責任者の緒方憲太郎氏による著書『ボイステック革命 ~GAFAも狙う新市場争奪戦~』から一部抜粋・再編集して掲載する。

 これまでテキストや動画では発信できていなかった、魅力的な「語るべきこと」や「自分の話を聞きたいファン」を持つ人たちも、デバイスとプラットフォームを得て、音声の世界でプレミアムな情報を発信し始めている。

 その一人が、ボイシーの「ワーママはる」さんだ。ボイシーのパーソナリティーに加わった当時は、外資系メーカーに勤めながら、2人の子どもをワンオペで育てるワーキングマザー(会社はその後退職)。今では4万5000人以上のフォロワーを持つトップパーソナリティーになっている。

 家入一真さんやはあちゅうさん、イケダハヤトさんなど、ブログやユーチューブのインフルエンサーが声で発信し始めた2018年ごろがボイシーの「第1のターニングポイント」だとすると、ワーママはるさんのような一般の人が音声に発信の場を見出し始めた2019年ごろが「第2のターニングポイント」だ。音声市場が急成長を始めた時期と重なる。ボイシーの再生数が急増、音声市場への注目度も上がり、私自身も明らかに「潮目が変わった」と感じ始めた時期だ。

 もともとボイシーでは、ワーママはるさんだけではなく、忙しい人向けのコンテンツを出すパーソナリティーの人気が高いという傾向があったが、最近は特に、ワーママのユーザーが増加している。ワーママはるさんや、ほかのリスナーに話を聞いてみると、実はネット上には、ワーママ向けのコンテンツが意外と少ないことがわかった。

 考えてみれば当たり前だ。忙しいワーママは、落ち着いて文章を書いたりする時間がなくなかなか発信できない。そして、時間がない彼女たちは、仕事や家事、育児の手を止めてテキスト情報をじっくり読む時間がない。「ながら聴き」ができる音声コンテンツは、ぴったりなのだ。

あなたにぴったりのフォーマットは何か

 音声は、忙しい情報発信者と忙しい受信者をつなぐことができるメディアだ。おそらくワーママのほかにも、今までネットのテキストや動画の世界には参入できなかった「発信者予備軍」がたくさんいるはずだ。そして、画面を見る時間がなく、「ながら聴き」ができるコンテンツを求めていた忙しい人たちも、たくさんいたのではないか。

 2020年ごろを境に、そうした忙しい人同士の需要と供給がぴたりとかみ合い始めているのを感じている。

 考えてみてほしい。確かにネット上には膨大な情報があるが、その中に本当に欲しい情報、おもしろそうな情報が、あなたにぴったりのフォーマットで存在しているだろうか?

 例えば、私はさまざまな商材のトップ営業の人の話を、もっといろいろ聞いてみたい。確かにネット上には、トップ営業だったという人の情報はあるが、テキストや動画で情報発信をする時間がないほどに引っ張りだこで忙しい人が、世の中にはもっとたくさんいるはずだ。

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