世界的な広告代理店インター・パブリック・グループ・オブ・カンパニーズ(IPG)傘下のマーケティング調査会社であるマグナグローバル(MAGNA)は、日本でこれまでポッドキャストがなかなか伸びなかった理由として、日本ではもともと、海外に比べてデジタルで音声を聴く習慣がないことを挙げている。一例として、「スポティファイが上陸した2016年時点で、音楽市場の8割をCDが占めており、歴史的に、レコードレーベルは楽曲をストリーミングサービスに提供することに抵抗感を持っていた」ことを挙げている。

 インターネットを介してアプリなどで聴ける音声コンテンツの老舗といえば、2010年にサービスを開始した「radiko(ラジコ)」がある。ラジオの電波が届かないところを補完する目的で始まり、当初は関東や関西の一部のエリアのみが対象だったが、徐々に対象地域やラジオ局が広がり、現在では民放ラジオ全99局の番組を聴くことができる。スマホのアプリで聴くことができるため、今では「ラジオは聴かないけどラジコは聴く」という若者も多い。

 そして2010年代後半から、ほかにもさまざまな音声配信サービスが生まれ始めた。2016年にボイシーがサービスを開始しているほか、2017年には中国発のヒマラヤ、エキサイトの社内ベンチャーとして生まれた「Radiotalk」が始まった。

 2018年には韓国の「Spoon(スプーン)」が上陸、ライブ配信やコミュニティー機能を持つ「stand.fm」も開始した。2020年になると、HIKAKINなどの人気ユーチューバーを抱えるUUUMが、「REC.」を立ち上げている。そして2021年に入り、音声SNSのクラブハウスブームが巻き起こったことで、「音声」にようやく注目が集まり始めた。

 ただ実は、それよりも前の2020年12月の時点で、「1カ月に1回以上ポッドキャストを聴く人の割合」は14.2%、人口の推定で1123万人にまで増えていたことが、デジタル音声広告を手掛けるオトナルと朝日新聞の共同調査で分かっている。この調査では、ポッドキャストを聴いている人のうちの47.1%は、聴き始めたのが1年以内と回答。そのきっかけとして22.5%が、「スポティファイやAmazon Musicでポッドキャストが聴けるようになったから」と答えている。海外でのポッドキャストブームが、日本にも波及し始めていると言えるだろう。

 日本でも「機は熟した」と言えそうだ。私自身も今年に入ってから、音声ビジネスに関する取材が急激に増え、他業界の人からも「ちょっと話を聞きたい」と声を掛けられることが多くなった。

 その背景としては、グローバルの動きと同様、音声認識などのテクノロジーの進化と、スマートスピーカーやワイヤレスイヤホンなどのデバイスの普及などがあるだろう。

 デバイスの進化が進んでいたところに世界中を襲ったのが、新型コロナウイルスの感染拡大だった。感染拡大を抑えるために、各国でロックダウンや外出自粛が行われ、リモートワークが推進されるようになった。オンライン会議が増え、イヤホンをしながら仕事をする習慣が広がると同時に、いわゆる「Zoom疲れ」「パソコンやスマホの画面疲れ」も引き起こした。そうした人たちが、音声に目を(耳を)向け始めたのは、ある意味自然なことだっただろう。

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