中国では、「ナレッジシェア(知識の共有)」としてテキストや動画、音声などにお金を払う文化が浸透しているといわれており、ヒマラヤやチンティンはその文脈に沿って成長してきた。その一方で、プロコンテンツを作るための作品の著作権使用料が負担になっているとされる。このため近年は、ヒマラヤも広告ビジネスに力を入れ始めている。2018年には米スターバックスの中国法人とコラボし、音声コンテンツ番組へのリンクを印字したカップ飲料を300万杯限定で販売。コンドームの英デュレックスは、恋愛や性の悩みについて語るチャンネルを立ち上げた。

 また、米ケンタッキー・フライド・チキンの店内に公式ラジオ局を作り24時間生配信をした番組は、1842万回再生・最大同時聴取数6万5000人を記録している。音声コンテンツのマネタイズ手法が多様化してきていると言えるだろう。

なぜ日本の音声コンテンツは未成熟だったのか

 急拡大しているアメリカや中国に比べると、日本の音声市場はようやく成長し始めたところだ。

 市場の規模もそうだが、聴かれているコンテンツの内容についても、アメリカ・中国などの成長市場とは異なる。じっくり聴くタイプのポッドキャストやオーディオブックなどは、日本ではまだそれほど多く聴かれていない。音楽や、BGM的にさらっと聴き流すタイプのコンテンツが中心である。

 音声の聴取は、大きく分けて2パターンある。一つは、例えば事務作業などの仕事をしているときや、勉強をしているときなど、視覚を使い、思考しているときに聴くものだ。聴くものは、思考の邪魔にならないような音楽などが中心となる。日本のラジオは比較的こちらに入るものが多いだろう。

 もう一つは、体を使い、思考はそれほどしていないときに聴くものだ。家事や運動、何かの袋詰めや畑仕事など、反復作業をしているときをイメージしてもらうとよいだろう。こうした場合は、BGM的なものでなくても、思考や集中力が必要な学習コンテンツ、オーディオブックなどもマッチする。

 日本の音声コンテンツは、前者のBGM的なものは多くあるが、後者の、集中して聴き思考を要するものは諸外国に比較して少ない。情報欲求や学びの欲求が高まる中、思考や学びにつながる音声コンテンツの需要はもっと広がるはずだ。

 これはあくまでも私個人の印象なのだが、アメリカや中国などに比べて、日本ではこれまで、「視覚で楽しむ」傾向が強かったように感じられる。ユーチューブですら音を消して見る人が多いし、テレビ番組も、特にバラエティーや情報番組などでは字幕を多用し、視覚情報で楽しむ傾向が強い。このためか、これまでなかなか良質な「面白い」音声コンテンツが生まれる土壌がなかった。

「聴く習慣」の広がり

 聴く習慣がないから良質な音声コンテンツが生まれないのか、良質な音声コンテンツがないから聴く習慣が生まれないのか。おそらくそのどちらでもあるのだろう。私がボイシーのサービスを立ち上げたときも、一番苦労したのは「聴く習慣」を広げることだった。

 海外でポッドキャストが急成長している一方、日本でポッドキャストに注目が集まるようになってきたのはつい最近のこと。日本ではまだ、ポッドキャスト専門の制作スタジオや配信サービスは少なく、これまでは、ラジオ局が電波で流している番組をそのままポッドキャストに仕立てたものが多かった。「ポッドキャストといえば、英語学習者が海外の英語コンテンツを聴くためのもの」といったイメージもあったのではないだろうか。