新卒人材の流出を防ぐために

 では企業側は、新卒人材の流出を防ぐためにどんな手が打てるか。会社が若手社員の感性をより理解し、制度設計を見直すことも一つの解決策だろうが、何より新入社員研修の改善が最短の策であると私は考える。

 20年、21年とオンラインでの採用活動、入社式、新人研修が定常化した。恐らくこの流れはしばらく続くだろう。以前のスタイルと比べ、オンライン方式はどうしても受け身になりがち。大学の授業をオンラインで受けている世代は、その傾向がより顕著になるに違いない。

 仕事をする中でいかに自己成長を果たすかや会社に居続けることのメリット、社会人とは何たるかという点などを理解するには、どうしてもオンライン研修だと弱い。加えて、転職願望が芽生えたときに、「まだこの会社で成長できるかもしれない」と思いとどまらせる「横のつながり」が生まれにくいことも課題だ。

 大手通信企業やIT企業ではこの点を考慮し、コロナ後すぐに新入社員研修を全員参加型からグループワーク主眼型に変更している。単に講義を動画で視聴させるのではなく、参加者がお互いに課題や気づきを見つけ合うというものだ。

 今後はオフライン(リアル)とオンラインを組み合わせ、それぞれの特徴を生かした形で研修を設計するのが主流となっていくだろう。例えば、まずはオフライン(リアル)で講師や参加者が直接出会い、人間関係をつくりながら研修を進める。次の回はオンラインで実施。知った顔同士のため、オンラインでのやりとりもスムーズになる、というようにだ。

大規模会場での集合研修は減り、少人数研修を柔軟に運用していくことが今後は主流となるだろう(写真:PIXTA)
大規模会場での集合研修は減り、少人数研修を柔軟に運用していくことが今後は主流となるだろう(写真:PIXTA)

 新入社員目線でいえば、第二新卒市場はチャンスと見えてしまう。実際、フルリモートの職場で転職活動をしながら、第二新卒市場に可能性を見いだそうとしている新人も少なくない。社会人になったばかりの若者たちの自主性に任せるだけでは、人材流出に歯止めはかからないだろう。

 企業はあるときはリアル、またあるときはオンラインと使い分けて、企業の文化や特色を学ばせていく必要がある。「若手はすぐに辞めてしまう」と諦めずに、新入社員との価値観の溝を埋めていく。そうすれば、受け身の学生たちも企業に根を張っていくはずだ。

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