「コロナ禍の中、苦労して採用し、手塩にかけて教育した2021年入社の新入社員たち。秋が過ぎ、それぞれの職場に定着したと思ったら、ドミノ倒しのように辞めていった……」。東証2部上場企業の人事部長はそう嘆く。退職した新人たちは、アフターコロナの好景気を見据え第二新卒市場に門戸を開く企業へと転職していったという。「3年は我慢」といった言葉は既に過去のもの。人材流出を見込んで雇用するか、企業文化を見直すのか。考えるべきタイミングだ。

(写真:PIXTA)
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オフィスで働く理由って何ですか?

 緊急事態宣言が解除され、リモートワークが終了する旨をZoomの朝会で伝える上司。元の職場の雰囲気が戻ることを期待して、喜々として伝えたところ、新入社員がけげんな顔でこう発言した。

新入社員「なぜ、リモートワークが終了するのでしょうか?」

上司「えっ? オフィス勤務するのが当たり前だから」

新入社員「在宅でも、効率よく仕事ができていますよね。わざわざ通勤させるメリットはあるんですか?」

上司「メリットは……。ほら、人の顔がリアルで見えるし」

新入社員「それってむしろ集中できなくてデメリットでは? リモートをやめる理由になりませんよね」

上司「……」

 これは私が創作したエピソードではなく、皆が知る有名企業での実際の話だ。

 この会話から、生意気な新入社員だと思うか、それとも情けない上司だと思うかは人それぞれ。両者にある問題は、一言でいうなれば世代間ギャップだ。上司は正常時の職場に戻すという原理原則に基づいて行動している(全社決定にすべからく従うというのもそれだ)。

 一方、コロナ後に入社した社員は、リモートワークが基本。入社前の研修を含め、入社式から人と直接会わずに仕事を始めた世代だ。効率主義で、わざわざ出社することにメリットを感じていない。

 従来、職場でのちょっとした雑談や飲食の機会に、世代間の意識のズレや価値観のすり合わせができていた。だが、オンライン化によってそうした場は消失。相互に理解できない環境がつくり出されてしまったのだ。働き方や金銭を得ることへの価値観は、2020年を境に別物になったと理解しておくべきだろう。

 ちなみに、オフィス勤務が絶対悪というわけではない。顔を突き合わせたチームワークでの活動、個人情報やリスクの観点、雑談や定常的なオフィスの中でしかできない業務の効率性などについて、丁寧に伝えれば新入社員たちも理解できよう。そうした努力もせずに、ただ頭ごなしに「オフィスに来い」と言うだけでは、「意味が分からない」となるのも当然かもしれない。

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