前回記事「新卒採用『リアルで会わずに内定』5割の衝撃 オンライン面接の功罪」では、流行としてのオンライン面接について紹介した。新型コロナウイルスの感染拡大により大きく変化した新卒採用トレンドにおいて、オンライン面接の普及とともに語るべき変化がある。それはダイレクトリクルーティングだ。

 結論から述べるが、これからダイレクトリクルーティングは本格的に流行するだろう。しかし、今までの新卒採用手法を揺るがすほどにはならない。その理由は後述するが、新卒採用は中途採用とはいろいろと事情が異なるからだ。

 さて、そもそもダイレクトリクルーティングとは何か、その採用手法について紹介する。まず、現在主流の採用方法は、企業がリクナビやマイナビなどに求人情報を掲載、その求人情報を見た学生がエントリーをするという「ナビ型採用」と呼ばれるものだ。

 「ダイレクトリクルーティング」は採用者と求職者の立場が逆となる。就職をしたい学生がプロフィルを登録し、公開。企業の採用担当者が、公開プロフィルを見て興味がある学生にアプローチをする手法だ。企業の方からアプローチをすることでミスマッチを防ぎ、自社に合った人材を確保できるというのがこの採用手法の売りだ。

 漁に例えると、ナビ型採用は、大海原に投網をして一気に魚を捕獲し、ダイレクトリクルーティングは、目当ての魚を一本釣りする形だ。学生目線では、プロフィルを公開すると、自分のことに興味、関心を持つ企業から連絡が来る。企業研究や業界研究をすすめて、1社の内定をとりにいくよりも合理的な手法だと言えるだろう。授業やゼミ、研究、部活、サークル、バイト、ボランティアなど学生時代にやりたいことの多い学生にとってもメリットの多い就職手法と言える。しかも、自分のことに興味、関心を持つ企業、自分の経験を評価してくれる企業、ないしは適性があると認めてくれる企業から連絡が来るので、社会を知らない「卵」の立場からすれば知名度とは別のベクトルで企業を選ぶきっかけとなるだろう。

 企業側から見てもダイレクトリクルーティングのメリットは多い。まず、通常のナビ型採用は、多くの学生を集めてその中から選考をすることで、自社に合う人材を採用してきた。そのため、学生の選考、合否連絡に多くの時間が必要になる。そもそもエントリー数や1次面接数が多くなれば良い人材が集まるという訳ではもちろんない。だが、学生を沢山確保し選別することがベストだという応募者数を目標に掲げる人事部もいまだ存在している。

 ダイレクトリクルーティングであれば、学生の登録内容である程度判断することができる。その上で出会い、お互いの条件をすり合わせしていくので、面接回数の削減や、採用ミスマッチの防止につながる。今まで形骸化していた人材ペルソナの策定も、ダイレクトリクルーティングを始めたことによって明確化されたという話もあるぐらいだ。

 また、光るスター型の人材の採用にもつながっている。自走できるタイプの即戦力人材。はたまた大学時代に起業するようなアグレッシブな人材。特定ジャンルに特化した研究者なども、今まで、ナビ型採用の学生登録情報では見つけることが難しかった。いずれも、いわゆる学歴フィルターに埋没することが多かったのだ。大学名、学部、志望業界などといった情報だけでなく、その学生が経験してきたこと、考えたことなどの情報からも判断ができるようになったことで、より人となりが把握できるようになった。

過渡期のダイレクトリクルーティング

 メリットもあればデメリットもある。それはダイレクトリクルーティングの採用コストで、1採用あたり30~50万円がかかる。対するナビ型は100万前後で採用ページを作ることが可能だ。1名だけの採用であれば明確にコストが下がったといえる。だが、10名採用するのであれば、ナビ型の方がコストパフォーマンスが良い。

 また、人事部にヒアリングをすると、ダイレクトリクルーティングを始めた企業の多くは、ナビ型とダイレクトリクルーティングの両方を併用している。前述したとおりナビ型採用は、採用人数の確保がしやすい一方で、ダイレクトリクルーティングでは、質は高められても量の確保は難しいといった問題がある。

 しかし、ダイレクトリクルーティングの費用面でのデメリットも見直されつつある。ナビ型採用で多くの学生を集めて選考する過程で、説明会や面接の会場費、説明会や面接を行う社員や学生対応を行う社員の人件費、会社案内などの印刷物の費用など一見見えにくい負担を加味すると、費用対効果が逆転することもある。また、企業から効果的な連絡をすることで、学生の反応は大きく変わることも分かってきた。いわゆる採用力のある企業はドンドン一本釣りで採用が可能なのだ。そういった事例も出始めてきている。

 では、なぜ多くの企業がダイレクトリクルーティングを併用して利用しているのか。その理由はダイレクトリクルーティングが、ナビ型採用では採用が難しい業界や職種の採用に適しているからだ。例えば、知名度のある一部上場IT企業は新卒採用でジョブ型を採用している。IT企業なので、エンジニア職や営業職への応募は多数あるのだが、イメージのしづらい部署でも応募者を集めたい。そうした状況を打破するために、企業の方から学生をリクルーティングするダイレクトリクルーティングを活用している。

続きを読む 2/2 ダイレクトリクルーティングがマッチする企業や人材

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