スマートフォンのテザリングだと回線が弱く、映像により通信量を超えてしまうこともある。ちゃんとした面接をするのであれば 、新規でプロバイダー契約をしなくてはならない。回線契約内容にもよるが、月々スマホの通信料金がかかっている中で、面接のためだけに追加でインターネット接続にコストを払うというのは実にもったいない。他にもノートパソコンのカメラよりも、より顔をハッキリと映すためにウェブカメラの購入や、顔色や表情をきれいに見やすくするリングライトやレフ板代といった今までの就職活動では発生しなかったお金が必要となってきている。
そうしたツールを集めるだけで準備完了ではない。意外とオンライン面接のための見えない作業も多い。下記は私が学生に紹介している面接の上での必要事項のチェックリストを抜粋したものだ。
就職活動マニュアル的なものは、日々変化していく。現時点ではまだまだ確立されていないが最低限やらなければいけないことが多様にあり、リクルートスーツを着用して向かえばいいだけであった面接とは毛色が全く異なるということは理解していただけるだろう。
こうした流れを感じ取り、大学のキャリアセンターもオンライン面接への対応を急いでいる。一部の学校はテレワーク用のブースをレンタルし、面接が多い期間に大学生活と併用できるように貸し出している。仕送りがなく奨学金に頼りながら通学している大学生には、こうした手厚い支援が結果につながっている。ただ、その規模も大学により予算が異なるため、そこにも学校格差が生まれてくる可能性はあるだろう。

ネガティブなポイントばかり紹介してしまったが、このオンライン就活によってメリットを享受しているのは一番に地方学生と地方企業だと思っている。距離をめぐる格差がなくなることで、Uターンを歓迎したい企業が採用に成功したり、地方の有名大学生が気軽に都内の大企業からオンライン内定を獲得している。今までは、大学の授業をスキップして就活に向かうのが地方大学生の当たり前だったが、昼休みや講義の合間でパッと面接を受けることができる。そういった流れは、都市部人材が都市部の中で就活をするという世界観が変化する兆しとして注目しておきたい。今後は都内学生がこぞって就職をしたがる地方企業が生まれてもおかしくはない。
今後の展望とオンライン面接の変化
コロナによって緊急措置として始まったオンライン面談ではあるが、集団面接やグループワークなどが行われにくくなり、個人面接がメインとなるのは今後のトレンドとして断言できる。
そうした学生を支援しつつビジネス化を目指す動きも増えつつある。例えば、都市部のホテルはインバウンド需要を見越して拡充していたが、現時点では空室が目立つ。そうした中で、1000円程度の低価格で面接用のデイユースプランを提供するケースも出てきた。高速Wi-Fiもありしっかりとしたライティングもあるため、自室よりもはかどるはずだ。他にも小規模会議室やカラオケボックスなどで面接使用ニーズに合わせた短時間活用も始まっている。
人事側は、面接ツールの変化や適応化など昨年はバタついた。その反省からか今年は、オンライン面接のためのルールや面接の整備が本格化したと言える。とはいえ、まだまだ企業目線での面接に終始してしまっているというのは課題として残る。就活生が抱えるオンライン面接により発生した鬱屈とした悩みや、今後増えてくるミスマッチ。そして内定をもらっても断ってしまう学生たちをどうフォローできるかは課題になるはずだ。
また、オンライン面接だけでなく人事が使用するツールも煩雑になりつつある。一部ではAI面接や動画面接などの導入を始める企業も増え、毎年のシステマチックな新卒採用に差別化が起きつつある。そうした過渡期を経営者や人事部がどう戦略を立てて実践していくのか、一筋縄ではできない就活事変が始まりつつある。
次回はこうした流れの中で、大手も使用し始めた新卒向けダイレクトリクルーティングについて紹介する予定だ。
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