新卒採用活動において、多くの企業で導入されるようになったオンライン面接。距離を感じることなく、お互いが気軽に面接できる環境となった。その半面、新たなコミュニケーションロスや失敗もあるという。今回は、まだまだ過渡期とも言えるオンライン面接の功罪について紹介したい。

コロナがもたらした「オンライン面接」の波

(写真:PIXTA)

 大手企業の面接において、選考の初期に行われるプロセスといえば、複数人の学生を集めて面接を行う集団面接やグループワークだろう。だが、新型コロナウイルスにより新卒採用の面接スタイルは大きく変化。集団面接は全く行わず、最終面接まで個別に行うオンライン面接が増えた。中には学生が企業に一度も行くことなく内定まで出す企業もある。

 新卒学生向けスカウトサービス「iroots」が実施した2022年に卒業予定の大学、大学院生を対象とした調査(回答者数650人)によると、内定を取得している学生のうち「内定までの全プロセスがオンライン完結する企業のみだった」と回答したのは52%にも上った。企業に足を運ぶことなく内定を得る形は、古くからの就職活動とガラッと変わってしまった。コロナ収束後も、オンライン面接は一定のメリットがあるため、活用されるのは間違いないだろう。

 さて、昨年と今年のオンライン面接を比較すると、昨年は載せ替え、今年は最適化の年といえる。2020年はコロナの急激な感染拡大を受けて一気にオンライン化へシフトしたが、今までの面接方式をオンライン化するという、いわば代替手段としてのオンライン面接が主流だった。集団面接を軸としていた企業は、集団面接をオンラインツールを使って実施し、就活生たちが1つの画面に集まり、その中で面接を実施した。

 そうした面接方式には、「他の就活生が話をしているときに気になってしまった」という通常の面接で聞かれるような感想だけでなく、「就活生の顔が正面の画面に映っていて緊張する。落ち着かない」という意見もあった。通常であれば面接官と就活生は向き合っているため、就活生同士が見合わせることはない。オンライン面接では、全員の顔が見えるため、緊張するのだ。より就活生の自分らしさを見ようとしているのに、それが見ることができない面接になってしまった。そういった反省点や意見を踏まえ、2021年からは、集団面接をやめて、個人面接に切り替える企業も出てきた。

 そもそも企業視点での面接の役割は、3点に定義される。

  • (1)【見極め】就活生が自社に合う人材かを見極める、いわゆる選考
  • (2)【理解】自社の仕事や価値観、雰囲気などを理解してもらう
  • (3)【動機形成】 一緒に働きたい、入社したいと考え、決めてもらう

「(1)見極め」は 、オンライン面接でも比較的スムーズに実施できる。通常のリアルな面接では、話す「内容」に加えて、「雰囲気」や「表情」「話し方」といった非言語コミュニケーションも評価の対象となる。オンラインでは「内容」に焦点が当たるので、実は、対面よりも見極めができるという意見もある。しかし、オンラインの会話では微小なタイムラグが生まれ、スムーズな会話のキャッチボールが生まれにくい。そのため、学生は「面接で本来の自分をアピールできなかった」という感覚を持ってしまいがちになる。

 オンラインのコミュニケーションの特徴として、「言葉で説明できる情報」は入ってきやすいが、「言葉で説明しにくい情報」は入ってきにくいというのがある。「(2)理解」については言語化しにくい会社の雰囲気などは特に伝わらないだろう。また、「伝わった感が得られにくい」という点でまだまだ課題が残っている。

 それらを踏まえて考えると、「(3)動機形成」は、より実施されにくくなっているといえる。

 学生は「自分のことを企業に分かってもらえていない」と感じ、併せて「企業のことを自分は分かっていない」という感覚を受ける。最終面接のみを対面で行うオンラインとオフラインをハイブリッドに行う企業が増えてきたのには 、こういった背景がある。また、学生は内定を承諾することに不安を持つようになるため、内定者へのフォローが通常より重要になるという点も最近分かってきたことだ。

伝わらない問題は学生の側にも

 オンラインというのは時間や距離は乗り越えるが、どうしても伝わる情報が減少してしまう。そのため、両者とも伝わりづらさにモヤモヤを感じることが多い。面接官の反応が見えなければ、モチベーションの高かった就活生も面接で志望度が低下してしまうのは仕方のないことだ。

(写真:PIXTA)

 その対策として伝えているのは、いつもより少し大きめのリアクションとジェスチャーを取り入れ、声以外の情報を通じて、自分の感情を伝えていくということだ。画面を通じて見るリアクションは、一見、何もリアクションがないように見えがちだ。そのため、通常の1.5倍くらいのリアクションをして、ようやく相手に自分の思いが伝わる。これは、何も面接に限った話ではなく、初対面の人同士のオンラインコミュニケーションにおいても活用できるだろう。

 学生の側では戸惑うことが多かったオンライン化ではあるが、オンライン説明会やオンライン面接により企業を受けることへのハードルが下がったとの声も出ている。今までは説明会や面接に参加しようとすれば、そこまでの移動時間や交通費は無視できないコストだった。オンラインツールを通じて、企業や人事担当者とも簡単につながれる環境は、知名度のない会社や郊外、地方にある企業にとっても追い風となっている。企業を志望するという高いハードルから、企業をまず知りたいという低いハードルへの変革は、若い学生にとって急成長の場を見つけるチャンスかもしれない。

 就活生にとってメリットが多いオンライン面接だが、学生目線では、対面と比較して悩ましい問題も露見している。それは、オンライン面接のために準備するお金だ。現代の若者たちは自分用のパソコンを持つ人が減少傾向にあるというデータもあり、スマートフォンで何でもやってのけていた。しかし、面接のために新規パソコンやタブレットを購入しなければいけないという学生もおり、金額として大きな負担となるのは容易に理解できる。

続きを読む 2/2 今後の展望とオンライン面接の変化

この記事はシリーズ「新卒戦線異状アリ」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。