最近、TikTokやメタバース(仮想空間)などを採用活動に取り入れる企業が目立つ。こうした最新トレンドを踏まえた施策は話題にはなるものの、一時的なブームで終わってしまうことも多い。今、このトレンドに乗るべきか?
オンライン就活に新たな兆し
今から10年くらい前の採用活動では、企業は就職サイトや合同企業説明会を活用すれば、学生との接点を十分につくれた。まずは学生に就職サイトからエントリーしてもらい、会社説明会参加後に面接などの選考といった流れが基本。エントリー以降のプロセスは、ほぼ対面が前提だった。
新型コロナウイルスの感染拡大以降、企業の採用活動はオンライン化が加速。説明会や面接はもちろん、インターンシップまでも、今や多くの企業はオンラインで実施している。
最近の採用活動のトレンドとして、TikTokをはじめとする動画やメタバース(仮想空間)など若者文化や最新技術を取り入れる企業が増えている。
活用のメリットはいくつかある。1つには、企業に知名度がない場合でも、学生が興味や関心を持ってくれやすい。2つ目に、新しいことに率先して取り組む企業といったイメージをつくれる。ただし、こうした取り組みは話題性を生む半面、労力や費用をかけた割に成果につながらず、長続きしないことも少なくない。
「ソーシャルリクルーティング」が活況な時代も
企業の採用活動の歴史を振り返ってみよう。求人広告型の就職サイト一辺倒から大きな変化が生まれたのは2000年代半ば頃、「採用ブログ」を導入する企業が増えたことだ。採用ブログには、企業情報や採用情報をコンスタントにリアルタイムで発信できるという良さがある。
次に、TwitterやUstreamが活用され始め、10年ごろには「ソーシャルリクルーティング」という言葉が使われるようになった。ソーシャルリクルーティングとは、FacebookやTwitterなどのSNS(交流サイト)を活用した採用方法のことをいう。
企業側は企業アカウントをつくり、情報を毎日のように更新。「マイナビ」や「リクナビ」などの求人サイトとは別に、社内の雰囲気を伝えるなど学生により身近な情報を提供していた。当初、採用活動の枠組みを大きく変えるのではないかと期待されたが、10年近く経過した今、新卒採用にFacebookはほとんど利用されていない。
なぜ定着しなかったのか。企業側でいえば、運用が難しかったからだ。ネタ探しや投稿に労力がかかる上、投稿コメントへの反応も難しい。
学生目線では、「いいね」や「シェア」することへの居心地の悪さがあったという。つながりのある友人に、企業に「コメント」や「いいね」をしていることが分かってしまうので、「志望企業を知られることが恥ずかしい」「企業に気に入られようとしていると思われるのでは」などと感じていたようだ。
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