IT部門とデジタル推進組織は「まぜるな危険」

 IT部門とは別にデジタル推進組織をつくった企業では今、両方の組織を統合しようという動きが活発だ。何せ事業部門の本業のデジタル化や新たなデジタルサービスの立ち上げと、基幹系システムの刷新による業務改革は、DXの両輪だからな。デジタルサービスをビジネスとして展開するには、基幹系システム側の顧客管理や会計などのシステムとの連携も不可欠になる。とにかく、隠蔽体質のIT部門とイケイケのデジタル推進組織が別々に動けば、DXが空中分解するような事態にも陥りかねない。

 だが、IT部門とデジタル推進組織を統合しようにも、基幹系システムのお守りをやってきたIT部員と、中途採用されて「まずはプログラムを書いてみて確かめてみることが大切だろ」と考えるプログラマーらとは水と油だ。下手をすると、互いに相手を見下すような状況になる。まさに「まぜるな危険」というレベルだそうだ。だから、組織統合といっても、DX推進本部といった名称の中2階組織をつくり、その下にIT部門とデジタル推進組織をぶら下げる形にする企業が多い。

 何の事はない。とりあえず統合したふりをしているだけだ。両組織の相互理解や連携が進まないといけないのだが、デジタル推進組織のプログラマーはIT部門を無視したがるし、IT部員もDXなんかに関わりたくないと、たこつぼに引きこもろうとする。そういえば、いまだにメインフレームを使っている企業が、デジタル関連の取り組みにIT部員の協力を得ようとしたら、「我々はメインフレームを担当しているのであって、クラウドなんかに関心はない」と訳の分からない理由で拒否されたそうだ。

 ちなみに、こうした隠蔽体質のたこつぼIT部門は製造業や金融機関に多い。先ほどDXを推進できるIT部門には偏りがあると書いたが、これはその逆だ。まずは、たこつぼIT部門が製造業や金融機関に多い理由を解説しよう。製造業の場合、伝統的にIT部門がお守りをしてきた基幹系システムは会計などのバックヤードのシステムに限られてきた。一方、金融機関は巨大な勘定系システムなどを抱えた装置産業であり、その装置のお守りをするのがIT部門の仕事だった。

 そうするとIT部門はどうなるか。製造業ではバックヤードのシステムが基幹系だから、IT部員が事業部門のビジネス現場を知る機会はほとんどない。工場の現場についても、生産管理システムは各工場が自ら構築するのでIT部員は中身を知るよしもなかったりする。消費者向けの製品を生産している製造業なら販売は小売業などに依存するから、そもそも顧客情報もそれを扱うシステムも持っていなかったりするのだ。

 金融機関では製造業と異なり、基幹系である勘定系システムなどはビジネスに直結するシステムだ。ただ勘定系システムは巨大な装置であり、障害や誤作動が許されないため、特に銀行のIT部員はシステムの安定運用にのみ、集中することとなる。だから、金融ビジネスの現場を何も知らないし、クラウドを使ってビジネスをデジタル化するなんて話には何の関心も示さない。そういえば、隠蔽体質のIT部門は特に金融機関に多いそうだ。

 かくして製造業や金融機関のIT部門やその部員は、自社のビジネスや顧客に関心を示さず、基幹系システムのお守りに徹するのが自分たちの仕事と信じて疑わなくなる。しかも、経営や他部門からとやかく言われたくないので隠蔽体質になる。特に製造業のIT部門の場合、長らくシステムのお守りしか仕事がなかった。そのため日本の失われた20年の間は、ひたすらリストラの対象となり、ますます引きこもりとなった。そんな訳で、製造業や金融機関では、DXの推進は新たに設置されたデジタル推進組織の役割になった。

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