IT部門もシステム子会社もブラックボックスに

 「IT部門が経営会議などに上げる資料を一度見てみるとよい。資料にはIT用語、ひどい場合にはIT部門の部内用語がちりばめてある。あれじゃ、経営者や他部門の人には全く意味不明だ」。記事の冒頭で紹介したコンサルタントはそんな話をしていた。これを聞いて、IT部門が出した経営会議資料を見るまでもなく、今も続くIT部門の隠蔽体質の本質を理解した。自分たちのやっていることを外からとやかく言われたくないし、説明もしたくない。要は、放っておいてほしいのだ。

 「何を子供みたいに」といった話だが、確かに言われてみれば、似たような話が幾つも聞こえてきている。少し前のことだが、ある企業の新任IT部長が嘆いていた。この企業はIT部門の実動部隊をシステム子会社に移管しており、本社のIT部門は企画機能しかない。新任の部長も非IT部門の出身者だった。で、この新任部長は実質的なIT部門であるシステム子会社についてぼやいていた。「保守運用費が適切なのかを把握したいが、どんなに聞いても紋切り型の回答ばかり。システム子会社がブラックボックス化している」。

 そういえば、経営会議でCIO(というか執行役員IT部長)が「お地蔵さん状態」なのもよく聞く話だ。お地蔵さんとは一言も発せず座っているだけの人を指す。で、他の役員から不思議がられる。DXが大ブームになる前の話だが、大企業の役員は「そういえば最近、CIOが経営会議で発言するのを聞いたことがない。IT関連で経営課題はないのだろうか」と首をかしげていたな。

 かくのごとしで、多くの企業のIT部門はいわば丼勘定でIT予算を差配できた黄金期を過ぎて劣化の一途、没落の一途をたどっても、隠蔽体質はそのままというわけだ。これ以上IT予算を削られたくない、あるいはIT部門内の業務の進め方やITベンダーとの関係について部外者からどうこう言われたくないなど、理由はいろいろとあるだろうが、とにかくたこつぼ状態で仕事がしたいのだ。そのために、紋切り型の説明しかしないか、素人には何を聞けばよいかも分からなくなるぐらいIT用語や部内用語をちりばめた話をするわけだ。

 だがIT部門にとっては残念なことだが、今や多くの経営者がDXの必要性、つまりITの重要性に目覚めてしまった。利用部門である事業部門も本業を強化するためにデジタル武装が必須となった。もはやIT部門は「経営者や利用部門はITを分からない」などと嘆いてみせて被害者を装うこともできなくなった。にもかかわらず、多くのIT部門がたこつぼに閉じこもり、基幹系システムのお守りのみを続けようとしている。

 もちろん、全てのIT部門がそうだと言っているわけではない。DXの先進事例とされる企業では、IT部門がDX推進の中枢を担っているケースもそれなりにある。こうしたDXを推進できるIT部門については後で触れるが、実は業種的に面白いほど偏りがあって、日本企業全体の中では少数派だ。その他の企業では、たこつぼIT部門はDX推進に役に立たないと烙印(らくいん)を押されて、新たにつくられたデジタル推進組織がその任を担う形となる。

 まあ、これで済むなら、ある意味でハッピーかもしれない。企業としてはデジタル推進組織を軸としてDXを進めればよいし、IT部門もたこつぼに引きこもり、「デジタルを使った変革」などといった訳の分からないことに関わらないで済む。だけどなぁ、IT部門は基幹系システムを抱え込んでいる。老朽化した基幹系システムの刷新は例の「2025年の崖」で示された通り、DXの要でありその成否の鍵を握る。ではどうするか。そりゃIT部門を悔い改めさせるか、リストラで最終処分するしかない。

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