ひょっとしたら、こんなひどい状況は世界中で日本ぐらいかもしれない。日本の企業や行政機関はその驚愕(きょうがく)の事実をよくよく認識すべきだと思うぞ。何の話かというと「極言暴論」で書く話なので、ITに関わることに決まっている。実はITこそが日本の非効率の元凶そのものなのだ。この認識がない限り、「DX(デジタルトランスフォーメーション)だ」と力んでもちゃんちゃらおかしいのである。

 何も突拍子もないことを言っているわけではない。極言暴論の熱心な読者ならよくご存じだと思うが、こんなふうに単刀直入には書いていないものの、日本の企業や行政機関のシステムの惨状については何度も何度も警告してきた。もちろんIT自体に罪があるわけではない。企業や行政機関のITの使い方、システムの在り方があまりにも愚かなのである。その結果、生産性の向上やイノベーションを実現するはずのITが、逆に足を引っ張る諸悪の根源と化してしまっているのだ。

 仕事の道具であるITが逆に足を引っ張っているのは何かに似ているな、と以前から思っていたが、最近ようやく思い至った。そうだ、ハンコやファクスと全く同じではないか。ハンコやファクスはかつてとても重要な仕事の道具だったが、今では「アナログ大国ニッポン」の象徴として世界中の笑いものになってしまった。で、ビジネスの信頼性を担保し効率を上げるツールとして重宝されてきたハンコやファクスが、ビジネスのデジタル化を阻む元凶として退場を迫られつつある。

 もちろんITと同様に、ハンコやファクスに罪はない(「ファクスも広い意味ではITだ」というツッコミはよしてくれ)。特にハンコ、というか、正式な名称で記したほうがよいな。特に印章は昔から日本の商取引などを支えてきたものであり、ある意味、文化遺産と言ってよい。だが、もはや誰の目にも、ビジネスのデジタル化を妨げ非効率な業務のやり方を固定する存在であるのは明らかだ。DXの推進に伴い、ファクスとともにビジネスの現場からは消えてもらうしかない。

 先ほど、こうした印章やファクスと、日本企業などのシステム(の在り方)がよく似ていると書いた。実際に、本来は仕事に役立つ有用なツールであったはずなのに、逆に仕事の足を引っ張る存在になってしまっている点では同じだ。だが、大きく異なる点もある。印章やファクスを使い続けていてはまずいとの認識は経営者にも広まっているが、ITの場合、実態は出来損ないで非効率の元凶のような基幹系システムであっても、IT部門などから洗脳されて「我が社の経営の要」などと何となく思っている経営者が大勢いる。

 「おいおい、ITこそが日本の非効率の元凶とか言っているが、具体的にはいったい何なんだ」。この極言暴論をたまたま読んでくれている人からはそろそろ、そんな怒りの声が上がりそうだな。まずは極言暴論の主要読者、つまり人月商売のITベンダーの経営幹部や技術者、客のCIO(最高情報責任者)やIT部員らに「ITこそが日本の非効率の元凶」という事実を改めて深く認識してもらうために、こんな調子で書き始めてしまった。これからその詳細を誰にでも分かる形で解説しよう。

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