自治体システム標準化が失敗すると断言できる訳

 そもそも、なぜ自治体システム標準化プロジェクトがうまくいかないのか。その理屈を明確にしておこう。まず各自治体、特に政令指定都市など大規模な自治体では、同じ業務でもそのやり方、進め方はてんでばらばらだ。行政機関だからやらなければいけないことは法律などで規定されているが、それをどのような業務プロセスで実現するかは自治体ごとに異なっている。これは当たり前の話だ。何せ自治体職員は終身雇用で、他の自治体の業務のやり方を知らないからな。自治体それぞれに、結果的に門外不出となった業務のやり方がある。

 当然のことながら、自治体の職員たちは自分たちの業務のやり方を変える必要性を感じてはいない。言っておくが、ここで職員というのは、いわゆる利用部門の人たちのことだ。そして業務のやり方、業務プロセスは基幹システムなどに実装され固定されている。だからこそ日々の業務をつつがなく遂行できる。にもかかわらず突然、国が基幹システムを標準準拠システムに移行せよと言い出した。しかも、基になる標準仕様書なるものは、日々市民らに接する自治体の現場の業務を知らない中央官庁がつくったものだ。

 するとどうなるかは容易に想像できるはずだ。自治体は標準仕様書に当然従わなければならない。だが職員からすると、業務のやり方を標準準拠システムに合わせるなんてあり得ない。むしろ「我々の業務のやり方にシステムを合わせてくれないと困る」と声高に主張するはずだ。大半の自治体の首長は票になりそうな案件でもないため原則無関心で、「これを機に業務改革に取り組め」などとヤボなことは言わない。その結果、標準仕様書に従うだけでなく、システムを業務に合わせるための追加要件が発生することになる。

 何のことはない。膨大な税金をぶち込んで、そうでなくても足りない技術者を大量動員した揚げ句、標準準拠システムのふりをした各自治体独自のシステム、現行通りのシステムが出来上がることになるわけだ。これは民間の企業で「ERP(統合基幹業務システム)に業務のやり方を合わせる」と宣言して、基幹システムの刷新に乗り出したケースに酷似する。利用部門の激しい抵抗に遭い、結局はシステムの機能を既存業務のやり方に合わせるため大量のアドオンをつくりまくるのと同じだ。同様のパターンに自治体の基幹システムも陥るわけだ。

 で、今回の自治体システム標準化プロジェクトにそのまま適用できるような、企業の究極のあるある話を思い出した。それが極言正論の記事で紹介した自動車メーカーとその販売会社の事例だ。それは10年ほど前にSUBARUの当時の社長から聞いた話であり、要点はSUBARUに限らずどんな自動車メーカーでも、販社向けの「標準」システムを開発・導入するのは難しいというものである。必ず販社から苦情が出て、結局は販社それぞれの業務のやり方にシステムを合わせろという話になってしまうのだという。

 最近は少し変わってきたとも聞くが、どんな自動車メーカーの系列であっても、それぞれの地域に独自の営業エリアを持つ販社はいわば一国一城のあるじ。同じ販社なのだから業務のやり方は本来同じはずだが、その実態は各社で異なる。しかも販社同士は互いに他社がどういうやり方をしているのかを知らない。だから、自社の業務のやり方をシステムに合わせる必要性を理解できず、従来のやり方に固執する。その結果、いつの間にか標準システムは、販社各社の従来の業務のやり方に合わせた独自システムにすり替わってしまう。

 これって、自治体システム標準化プロジェクトの未来を暗示するような話でしょ。多少乱暴だが、自動車メーカーを国に、各販社を各自治体に置き換えてみればそっくりそのままである。ただし完全に同じではない。何せ国は標準仕様書をつくるだけだからな。それに自動車メーカーと販社の関係と異なり、国と自治体は形式的に対等の関係だ。しかも自治体は約1700もあり販社の数とは比べものにならない。そこから考えると、今のままでは自治体システム標準化プロジェクトの成功なんて夢のまた夢である。

次ページ 「極言正論」で示した提言をたたき台にしてくれ