人月商売のIT業界の多重下請け構造は「多重ピンハネ構造」だ――。こんな趣旨の記事をこの「極言暴論」で何度か書いてきた。すると、「SIerの技術者と下請けITベンダーの技術者ではやっていることが違うので、待遇に差があって当然だろ」という文句が必ず何件か来る。「私たちが下請け技術者の仕事をつくってやっている」と暴言を吐く連中よりはましなのだが、私から言わせれば「何を言ってんだか」である。

 もちろん、仕事の内容や能力が異なれば、報酬などの待遇が違って当たり前である。文句を言ってくる人は「やっていることが違うので待遇が違って当たり前」と言い切るのだから、優秀なプロジェクトマネジャーかSEなのだろう。もしプロマネなら反対に聞いてみたいことがある。それは「だったら、何で年収1000万円前後の安い給料で満足しているのか」ということだ。本来なら2000万円以上、大規模案件を切り回せる人ならば3000万円をもらってよいのがプロマネの仕事だからな。

 米国出羽守(「米国では」のかみ)になって言えば、米国では優秀なプロマネならそれぐらいの報酬を受け取る。そういえば随分前の話だが、ある大手SIerの幹部が「米国では3000万円ぐらいを稼ぐプロマネがいると聞く。うちのプロマネも優秀だから、それぐらいの単価が取れるように客と交渉してみたい」などと妄想していたな。ただその後、そんな交渉がまとまったという話を聞くことはなかったので、やはり幹部の単なる妄想で終わってしまったようだ。

 いきなり脱線気味になったが、冒頭の話に戻せば「やっていることが違うから待遇に差をつける」ことと「(多重)ピンハネ」とは訳が違うからな。まあSIerの場合、商流の間に入って自分たちは何もせずにピンハネする「中抜き業者」とは違うから、ピンハネなどと言われると頭に来るのはよく分かる。でも、だったらプロマネやSE、プログラマーらの個別料金を明朗会計で示さないといけない。人月商売はろくでもないが、少なくともそれが人月商売における最低限の「誠意」だと思うぞ。

 だが、今の人月商売のIT業界に明朗会計は存在しない。人月工数に基づく料金など、ある意味「壮大な虚構」だから、どんぶり勘定でしか示せない。例えば客のIT部門が完全な素人集団で、システム開発プロジェクトの社内体制もまともにつくれないような場合はどうなるか。当然、SIerが客に提示する料金は、まともな客に対する料金に比べて大幅に高くなる。いわゆる「リスクプレミアム」というやつだ。では、客に示す料金の内訳にリスクプレミアムの項目があるかと言ったら……あるわけないよね。

 リスクプレミアムの項目を設けたら、客から当然説明を求められる。そうなったとき「御社は危ない客ですので、これだけの料金を上乗せさせていただきます」などと言えるわけがない。いや、違う。本来なら言わなければならない。だが、ご用聞きのSIerは口が裂けてもそんなことは言わない。なので、虚構の人月料金の中に混ぜ込んでしまう。だから、プログラマーの料金を明朗会計で示すことなど、どだい不可能なのだ。

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