IT業界関係者の間では常識だと思うが、一般の世間では十分に認識されていないことがある。何の話かと言うと、世間の人の多くは技術者を十把ひとからげで捉えているということである。つまり、技術者は能力レベルに差こそあれど、誰もが似たような仕事をしていると思っているのだ。もちろん、そんなことはない。現実には、少なくとも2つのグループに技術者は大別される。

 あらかじめ言っておくが、ユーザー企業にいる技術者とITベンダーに所属する技術者に分かれると言っているわけではないからな。この後を読めばすぐに理解できると思うが、この分類は本質的ではない。例えばユーザー企業のIT部門の技術者とSIerの技術者を比べても、大きな違いは認められない。そんなふうに書くと、双方とも「あいつらと一緒にするな」と怒り出しそうだが、全くの似た者同士である。

 技術者を2つのグループに分かつのは、もっと本質的でシンプルな話だ。その本質的な話は後で詳しく書くとして、ここでは最も分かりやすい形で説明しておこう。1つのグループに分類されるのは、GAFAやシリコンバレーで働く人たちに代表される技術者たち。日本でも新興のIT企業でクラウドサービスに携わったり、ユーザー企業でデジタルビジネスの立ち上げに参画したりしている技術者たちだ。そしてもう1つのグループは、言わずもがなである。IT部門やそれを客とする人月商売のIT業界にいる技術者たちだ。

 「極言暴論」の古くからの読者なら「何だ。つまらない。またIT部門や人月商売の技術者をこき下ろす話か」と早合点するかもしれない。だが、ちょっと待っていただきたい。確かにIT部門や人月商売の技術者をこき下ろす気は満々だが、これまで極言暴論で書いてきたテーマとは異なる話だ。IT部門や人月商売のグループに属する技術者、そして彼ら/彼女らを雇っている企業の経営層は、両グループの技術者が持つ資質や能力などについて重大な勘違いをしている。その大問題について述べてみたいのだ。

 今回は早めにネタバレさせよう。IT部門や人月商売のグループに属する技術者の資質や能力については、次のような話がまかり通っている。基幹系システムなど従来のITに携わる技術者には堅実かつ慎重に業務を遂行する能力が求められている一方、デジタルビジネスを担う技術者には創造力や大胆な突破力が必要だ――。で、こんな話を聞いて、当の技術者も経営者らも納得する。「そりゃ、そうだ」ということで、IT部門には既存システムのお守りに特化させ、新たにデジタル推進組織をつくり別のタイプの技術者を中途採用したりする。

 もうアホウではないかと思うぞ。よく考えてみるべし。「堅実かつ慎重に業務を遂行する」のは、全ての仕事で求められる最低限の能力だぞ。何なら、自分の会社が人事評価制度で定めている職種ごとの「役割行動」などを読み返してみるといい。つまり、IT部門や人月商売のグループに属する技術者は「その程度しかできない」「その程度でよい」ということになる。当の技術者も、雇っている企業もこれをおかしいと思わない。だから「アホウではないか」と言いたくなるわけだ。

続きを読む 2/4 どんな仕事であっても最高ランクの能力

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