米国企業を「完コピ」したファーウェイをまねたらどうか

 勝手にやっている現場の集合体である日本企業の問題は、不正やシステム障害への対応といった「事件系」以外にも多数ある。まず組織がたこつぼ化していると、業務が非効率極まりないことになる。日本の労働生産性が主要先進国の中で最下位なのもむべなるかな、である。何せたこつぼごとに部分最適だからな。しかも、その部分最適も本当に「最適」なのか分からない。社員の多くはそのたこつぼ内でキャリアを重ねていくから、外を知らない。どうして今の業務のやり方が最適だと言えるのか。

 さらに業務の非効率さと密接に絡むのだが、顧客との関わりもそれぞれが独自に行うから、顧客にとってCX(カスタマーエクスペリエンス)が最悪になる。例えばWebサイトやアプリなども、製品/サービスごとにばらばらだったりする。一応1つにまとめられていても、それは「表紙」だけで、製品/サービスの画面ごとに操作性がばらばらというのはよくある話だ。銀行のアプリだと、別の金融サービスの画面に遷移する際に再度の本人確認を求めたりして、顧客にあきれられてしまう。

 まだ問題がある。というか、これが一番の大問題だろう。勝手にやっている現場の集合体という日本型経営をそのままにして、DXをやろうとしても絶対に失敗する、という問題だ。たこつぼ組織のままで業務をデジタル化したらどうなるか。今、多くの企業でたこつぼ組織の現場でDXを推進しようという訳の分からない取り組みが流行中だが、失敗すること請け合いだ。デジタル推進組織をつくったとしても、その新組織がたこつぼ化し、勝手にやっている現場の1つになるのに時間はさほどかからないはずだ。

 そんな訳なので、危機的状況にあるのは不祥事を引き起こした企業だけではない。このままでは全ての日本企業が、デジタル革命の時代にあって存続の危機を迎えるということだ。各部門、各部署の対抗心をあおることで現場力を発揮させ、世界を席巻してきた「栄光」の日本型経営をきっぱりと捨て去る必要がある。要するに、勝手にやっている現場の集合体を変革して、まともな企業組織にすることをDXの眼目にすべきなのだ。

 「じゃあ、どうすんだ」だが、別に難しいことは言わない。米欧企業を「完コピ」して企業の仕組みをつくり変えればよいだけだ。例えばCxO(チーフオフィサー)制度を完コピする。既に多くの日本企業の経営トップがCEO(最高経営責任者)を名乗ったりしているが、これはもう大笑いだ。CxO制度の最大の眼目は経営の横串機能の確立だが、例えば日本企業のCIO(最高情報責任者)はIT部門というたこつぼ組織の親玉でしかない。製品の品質面で不正を引き起こした日野自動車も当然、「本物」のCQO(最高品質責任者)らは存在しない。

 情報システムの在り方も完コピしなければ駄目だな。基幹系システム刷新に伴う業務改革で全体最適を追求するのはもちろん、データはシステムで一元管理し、経営から現場の業務を見える化して現場を統制する必要がある。社員がExcelを使ってこっそり……などは金輪際NGだ。こうした打ち手と併せて、顧客目線でのデジタルサービスの創出などを手掛けていけばよい。とにかく米欧企業の経営の流儀を完コピせよ。何せ日本型経営なるものは、米欧企業どころか中国や東南アジアなどの新興国の企業にも劣る、ひどい代物だからな。

 有名な話だが、中国の華為技術(ファーウェイ)のエピソードで記事を締めよう。ファーウェイのCEOはかつて社員にこう厳命した。「米国の靴を履く。自分の足を削ってでも靴に合わせよ。履き心地が違うからといって勝手に靴を変形させるな」。米国の靴とは米国のコンサルティング会社などから学んだ経営手法であり、自分の足とは従来のやり方のことだ。今では米国などから警戒されるファーウェイだが、米国企業を完コピすることで世界に飛躍した。DXの際に同じことを日本企業もやるべきだぞ。完コピするのは同盟国の企業じゃないか。

『アカン! DX』

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著 者:木村 岳史
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発 行:日経BP

[日経クロステック 2022年8月29日掲載]情報は掲載時点のものです。

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