全ては「勝手にやっている現場の集合体」のなせる業

 そういえば、以前「日本企業は勝手にやっている現場の集合体」と喝破した人がいて、大変感銘を受けたので、その指摘を基にこの「極言暴論」の記事を書いたことがある。それまで私は、日本企業の経営構造を「事業部門連邦制」と捉えていた。社長といえども他の役員のシマである事業部門に手を突っ込もうとしない。下手にそんなことをすれば、他の役員にクーデターを起こされて解任の憂き目に遭う恐れもあるし、実際にそういった例は幾つもある。

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 だが、実際には私の認識よりも「勝手にやっている組織」の粒がもっと小さかった。つまり、「勝手にやっている現場の集合体が事業部門であり、勝手にやっている事業部門の集合体が日本企業」というわけだ。社長や役員ら経営陣が要求するのは「○○の目標を現場の創意工夫で達成せよ」であり、これは必達。で、各現場は部分最適の極致とでも言うべき創意工夫、あるいは長時間労働、場合によっては不正という手段によって、自分たちだけで目標を達成しようとする。まさに日野自動車の報告書が描き出した世界そのものである。

 そんな日本企業では、勝手にやっている現場の集合体ならではの問題が不正以外にも発生する。その一例がシステム障害である。もちろんシステム障害自体は避けられないし、大した話ではない。問題は、単なるシステム障害が何で経営を揺るがすほどの「大事件」へ発展するのかである。単純な話だ。企業が勝手にやっている現場の集合体であり、組織がたこつぼ化しているからこそ、顧客の迷惑や損害の回避を最優先に考えた、適切な対応が取れないのである。

 その典型例が、みずほ銀行の一連のシステム障害だ。特に2021年2月に発生した1回目のトラブルでの「顧客放置事件」である。このときの障害では、顧客がATMに投入したキャッシュカードや預金通帳が戻ってこないという問題が発生した。顧客にとっては自分の財産に関わるだけに深刻な事態だ。日曜日だったことで銀行員やコールセンターとなかなか連絡が取れず、多くの人が長時間にわたりATMから離れられなかった。しかも、頭取が自行のシステム障害の発生をネットニュースで初めて知るというおまけまで付いた。

 今振り返っても大失態だが、みずほ銀行の調査報告書では「組織間連携および組織内連携が十分機能しなかったことによる組織としての危機事象への対応力の弱さ」を問題点として指摘していた。要するに、IT部門と顧客対応の部署が互いにどんな役割や機能を担っているかを理解しておらず、非常事態であるにもかかわらず情報共有がうまくできていなかったのだ。しかも、現場で何とかしようとしたのだろうが、経営陣へ情報を上げるのも遅れに遅れたというわけだ。

 しかも報告書にはこんな指摘もある。「積極的に声を上げることでかえって責任問題となるリスクを取るよりも、自らの持ち場でやれることはやっていたと言えるための行動を取るほうが、組織内の行動として合理的な選択になってしまう」「縦割りの組織構造において、あらかじめ決められた行動のみをし、それ以外の行動を取ることを禁じる(または評価されない)という組織においては、積極的な組織間連携を期待することは困難である」。

 これって、日野自動車の報告書の指摘とうり二つでしょ。だから読んでいて「あれ、この報告書はどこのだっけ」という気分になる。結局のところ、問題の根っこは同じというわけだ。というか、勝手にやっている現場の集合体である日本企業はどこも皆、同じような問題を抱えており、一つ間違えれば大事故・大事件を引き起こしてしまうのだ。ちなみに、みずほ銀行の報告書も公表されているから、時間があれば読んでみるとよい。やはり「うちの会社でもあるある。その通り」と何度もうなずくことになるはずだ。

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