人月商売を営むITベンダーが加盟する業界団体に情報サービス産業協会(JISA)がある。NTTデータを筆頭とするSIerをはじめ、多数の下請けITベンダーが集まる。コンピューターメーカーからSIerになった富士通やNECなどは入っていないが、JISAはまさに人月商売のIT業界の「代表」といったところだ。別の言い方をすれば、「極言暴論」を書く私ががやり玉に挙げてきた経営者が集まる団体である。

 そんなJISAから、たまに会報誌などが送られてくる。「人月商売を強制終了せよ」などと主張する私にも送ってくれるのだから、JISAの事務局もなかなか心が広い。ただ誠に申し訳ない限りだが、目次や見出しを見ても興味が湧くものはなく、読み込んだことはなかった。だが、数日前に届いた会報誌の特集記事には目がとまった。タイトルに「デジタル産業に向けたトランスフォーム」とあったからだ。

 要は「人月商売のIT業界がデジタル産業へと変革する」ということらしい。私の認識では、人月商売のIT業界がデジタル産業に化けることはあり得ない。何せ、日本で最も遅れた労働集約型産業がハイテク産業のふりをしているのが人月商売のIT業界である。そんな前時代的な産業が、GAFAやユニコーン(企業価値が10億米ドルを超える未上場企業)のITベンチャーなどがひしめく産業に生まれ変われるわけがないのだ。せいぜい、深く悔い改めたITベンダーの何社かが、デジタル産業の一角に食い込める程度であろう。

 という訳でシニカルな興味が湧き、JISA会報誌の特集記事に目を通してみた。どうやらオンラインイベントでの講演などをまとめたものらしい。読んでみると……少し感心した。断っておくが、感心したのは「少し」だからな。で、何に少し感心したかと言うと、SIなどの人月商売とは異なる、新たなデジタルビジネスの創出に取り組むITベンダーが意外に多いのだ。JISA加盟企業への調査では、約4割のベンダーが新ビジネスの創出、つまり自らのDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいるという。

 もちろん、この手の調査は額面通り受け取るわけにはいかない。ほんの数人の技術者をアサインして何らかのPoC(概念実証)をやっているだけのITベンダーも、新ビジネスの創出に取り組む4割に含まれるだろうしな。とはいえ私からすれば、それを考慮しても4割は多い印象だ。SIerだけでなく下請けも含めれば、ほとんどのITベンダーが人月商売のぬるま湯の中で惰眠を貪っているとみているからだ。

 それならばということで、今回の「極言暴論」ではいつもとはトーンを変えて前向きに、できるだけ多くのITベンダーがデジタル産業の一角に生まれ変われるよう、方策を伝授したいと思う。その核心は「客を選別して、レベルの低い客は切り捨てよ」である。JISAの特集では、「客のために人月商売を続けることは社会的責任である」といった旨のぬるい認識を示していたが、全然違うからな。「お客様に選ばれる企業になる」といった奴隷根性を捨てて、客を選ぶITベンダーになってこそ社会的責任を果たせるのである。

続きを読む 2/4 「お客様スイッチ」が入ったSIerのDX

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