何でもかんでも会社のせいにする技術者に一言

 かくのごとしで、日本にはITオンチの技術者がごろごろいるから、本当に困る。「ひょっとしたらITオンチかもしれない」という自覚がある技術者はぜひとも悔い改めてもらいたい。改めて言っておくが、何も最新技術をバリバリと使いこなせと要求しているわけじゃないぞ。今の仕事で必要な技術を習得するのは当然としても、それ以外の技術はそこまでする必要はない。ただ少なくとも注目を集めている技術については、きちんと基本原理などを理解し、現状や将来の可能性について自分なりに評価できるようにならないと駄目だと思うぞ。

 それに、これくらいなら大して難しくはないだろう。技術者はいつも、経営者をはじめとする文系のビジネスパーソンに「ITを理解しろよ」と言っているのだから(単に陰口で言っているだけかもしれないが)、自分たちも「ITを理解しろよ」である。文系のビジネスパーソンがITを理解するのはハードルが高いが、それでも最近はDXの推進などのために、ITを勉強する人は増えている。ぜひ技術者も彼ら/彼女らを見習ってほしい。

 こんなふうに書くと、必ず次のような反論が返ってくる。「そんなことを言ったって、目の前の仕事がものすごく忙しい。プログラミングスキルを高めるための勉強も必要だし、とてもじゃないが量子コンピューターやディープラーニングなどの最新技術などを調べている暇などないよ」。実際にその通りかもしれないな。だけど、他のビジネスパーソンだって、それは同じことである。

 どんなビジネスパーソンでも目の前の仕事やそのための勉強で手いっぱいだ。直接関係がない経営学の書籍を会社のお金で買って、就業時間に勉強できるというような話は聞かない。ましてITを勉強するなら、経営者も含め誰もが全くの独学だ。技術者も四の五の言っていないで、自らへの投資と心得て、身銭を切りオフタイムを使って最新技術などを学ぶべし。要は「甘えてんじゃねぇよ!」ということだ。

 今回の極言暴論はこれで終わってもよいのだが、このままではかなりバランスを欠くので、ITオンチの技術者を雇っている企業の問題についても指摘しておく。何でもかんでも勤めている会社のせいにしたがる技術者が結構いるので、「甘えてんじゃねぇよ!」と書いたが、DXを本気でやろうとするなら企業も悔い改めるべきだぞ。ITオンチの技術者を含め全ての社員にITを学ぶ機会を与えるべきなのだ。

 少し前にこの極言暴論で指摘した通り、日本企業は技術者へのニーズがとてつもなく「時代遅れ」なのだ。特に大企業は基幹系システムなどで枯れた技術に固執してきたため、これまでは最新技術に精通した技術者などお呼びじゃなかったのだ。今でこそAI技術者などの中途採用で大騒ぎしている企業も増えてきているが、依然として技術者は「時代遅れ」のままで放置する企業が多く、会社のお金で最新技術を学ぶ機会を与えようという発想が出てこない。

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 だが、デジタル革命の時代にDXを推進していこうとするのに、そんなことじゃアカンのとちゃうか。例えば技術者だけでなく全ての社員は、最新技術を学ぶために業務時間の一部を使っていいとか、高額のセミナーの受講や専門書の購入に補助を出すとかは当然やるべきだ。そして、やはり最新技術などを学んだビジネスサイドの社員と技術者が集まって、どんなデジタルビジネスが可能かを議論する場をつくるべきだろう。そのほうが、ITベンダーに丸投げのPoC(概念実証)をやるよりも、はるかにDXの近道だ。

 企業にも言っておこう。「社員に甘えてんじゃねぇよ!」。

『アカン! DX』

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著 者:木村 岳史
価 格:1980円(税込)
発 行:日経BP

[日経クロステック 2021年7月19日掲載]情報は掲載時点のものです。

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