「落ち目のERP」以外は受け付けない

 ITオンチの技術者は何も最新技術だけを無視するわけではない。既存の技術、枯れた技術であっても、目の前の仕事と直接関係がない技術には目もくれない。ユーザー企業のIT部門がそんなITオンチの技術者ばかりだと、これはもう悲劇である。IT部門が劣化して素人集団化しているよりも、むしろたちが悪いかもしれない。基幹系システムの刷新などの際に、IT部門が度を超した抵抗勢力になるのが目に見えているからだ。

 実際にそんな話があった。ある大企業が基幹系システムを刷新することにした。コンサルタントに依頼して、業務改革を伴う刷新プロジェクトのプランを立てたが、IT部門というかシステム子会社が難色を示す。このシステム子会社は自ら手を動かせる技術者をそれなりに抱えていた。そうした技術者がITベンダーの常駐技術者を巻き込んで、強硬に刷新プランに反対したそうだ。

 実はそのプランでは、基幹系システムとして使ってきたERP(統合基幹業務システム)を他社のERPにリプレースしようとしていた。システム子会社の技術者たちは、現行のERPをベースに基幹系システムを構築し、保守運用してきたために、他社製のERPに変更することに激しく反発したわけだ。単に頭ごなしの決定が気に入らなかったのではない。他社のERPを全く知らないので、技術者として仕事を続けられるか不安を抱いたようだ。

 はっきり言ってしまえば、基幹系システムで使っていたERPは落ち目のものだったから他社のERPへのリプレースは理にかなっていた。システム子会社は素人集団ではないのだから、本来ならERPの将来性や他社製品へのリプレースなどについて自ら検討しておくべきだったと思うが、それを怠っていた。ただただ落ち目のERPという狭い世界で、仕事を続けようとしていたわけだ。この話の後日談は当然あるのだが、これ以上書くとどの企業か特定されてしまう。それは本意ではないので、この辺りでやめておく。

 そういえばCOBOL技術者、いわゆるコボラーもITオンチの技術者の代表例だな。極言暴論の読者ならよくご存じだと思うが、私は「反COBOL」の先頭に立っていたので、コボラーの皆さんから目の敵にされてきた。それでも、いにしえのプログラミング言語であるCOBOLで開発した老朽システムのお守り役に若者を引きずり込む動きが後を絶たなかったので、COBOLベースのシステムはとにかく撲滅しなければと考え暴論してきた。そのかいあってか、今では十分ではないものの「脱COBOL」の動きが進んでいる。

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 私のCOBOL撲滅論に対して、コボラーの皆さんの反論は「COBOLは古びてはいない。今でも十分に使える」とか「COBOLの環境で学んだことは、他の環境でも生かせる」とかいった類い。そりゃ、そうなんだけどさ。この人たちは恐らく、他の技術を本格的に学んだことがないのだろう。つまりITオンチの技術者だと言える。私の知る限り、COBOLも含め複数のプログラミング言語を習得した技術者だと、若者に「コボラーになれ」と勧めるような人はいない。

 言っておくが、コボラーの皆さんの仕事自体を否定しているわけではないぞ。シニアの技術者が老朽システムの面倒を見ることで、若手技術者に最先端の仕事を譲ることは社会的に意義あることだ。けしからんのは、旧態依然たるCOBOLプログラムの改修に若者を引きずり込むことだ。現状維持をよしとする保守的な職場環境の中で、最新技術に触れる機会もなく過ごせば、若者の無限の可能性は失われる。ITオンチの技術者を再生産してはならない。

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