IT産業がなくてもデジタル革命の波に乗れる

 何度も言うが、今はかつての産業革命に匹敵するとされるデジタル革命の時代だ。そのデジタル革命の震源地なのだから当然と言えば当然だが、GAFAだけでなく次々と有力なITベンチャーが誕生する強力なIT産業を抱える米国には、洋々たる未来が開けている。一時期ほどの力はないとはいえ、今でも超大国だ。その超大国が産業革命期の英国と同じ状況にあるわけだから、羨ましいこと限りなしである。

 では他の国はどうかと言うと、中国もITベンダーが米国のクラウドビジネスの完全コピーに成功して急成長するなど、日本とは比べものにならないほど強固なIT産業が存在するようになった。米中対立による世界経済の分断などでこれから先はどうなるか分からないが、とりあえずデジタル革命の先頭に立ったわけだ。それ以外でも欧州諸国や韓国、東南アジア、インドなどでもグローバルで戦えるIT産業がどんどん育っている。もちろん米国のそれに比ぶべくもないが、それでも日本と違って心配無用である。

 心配無用と言えば、ほとんどIT産業が育っていないような国であっても、インターネットなどのインフラがある程度整っていればデジタル革命に乗り遅れる心配はない。重厚長大産業を生み出した産業革命と違って、資金力や地理的条件に関わりなく誰もがデジタル革命に参加でき、その成果を享受できるからだ(もちろん、世界経済の分断や経済制裁などの影響を受けていないことが条件だが)。

 その理由は極めて単純だ。上記の条件さえ整えば、どこの国のどの企業であっても、GAFAやマイクロソフト、ITベンチャーなどのクラウドサービスをいつでも利用できるからだ。特に米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)や米Google(グーグル)、マイクロソフトなどは、自社開発やITベンチャーの買収を通じて最先端技術を蓄積し自らのサービスに組み込んでいるから、ユーザー企業にその気があればディープラーニング(深層学習)や量子コンピューターなどの最新技術に触れることも容易だ。この点では、どこの国の企業であっても条件は米国のユーザー企業と同じだ。

 しかも日本と違って、自分たちの事細かな要求に対応してカスタマイズしたり、アドオンをつくったりしてくれる「便利」なITベンダーがほとんど存在しないから、クラウドサービスなどを原則としてそのまま使うしかない。もちろん、下手にカスタマイズするより、そのほうがよいことは極言暴論の読者なら先刻ご承知だろう。結局のところ、自国のIT産業がほとんど育っていなくても、必要な技術者の確保が難しいといった点を除けば、ユーザー企業が困ることはほぼないと言ってよい。

 このあたりの理屈は、新たなIT産業の担い手であるITベンチャーにとっても同じである。言い古されたことだが、画期的な技術やビジネスアイデアがあれば、資金が限られていても、Amazon Web Services(AWS)といったクラウドを活用することで即座に全世界を相手にサービスを提供できる。もちろん成長のためにはさらなる資金や技術者の獲得が不可欠だが、有力なサービスと認知されれば、世界のどこかにいる投資家や技術者を見つけることができるはずだ。

 そんな訳なので、自国にIT産業が育っているかいないかにかかわらず、どんな国でも、どんな企業でも、どんな個人でもデジタル革命に参画できるようになった。かつての産業革命では、明治維新後の西欧化によって何とか産業革命の波に乗れた日本を含めた「列強」が、その成果を総取りするような形になったが、デジタル革命は世界中にチャンスが広がる。ただし、世界に類を見ない人月商売のIT業界を保有してしまった日本は、その限りではない。

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