この「極言暴論」やもう1つのコラム「極言正論」を書き続けていることもあり、理想に燃えてDX(デジタルトランスフォーメーション)などの変革に挑んでいる人たちと議論する機会が結構ある。匿名やオフレコを条件に話を聞くのだが、その際に必ず出てくるのが社内の抵抗勢力の存在だ。理想に燃える人たちは抵抗勢力が改革を妨げていることに怒り嘆くのだが、その話を聞けば聞くほど「そりゃ、あなたの認識のほうがおかしいよ」と言ってあげたくなるケースもある。

 いや、実際にそう言ったこともある。どこの会社か特定できないようにするために、枝葉の話を省いて書くと次のようになる。要は基幹系システムの刷新を伴う業務改革の話だ。ある意味、DXの王道といってよい。IT部門で改革派を自認するその人は、利用部門の抵抗勢力に手を焼いていた。「利用部門の連中はDXに賛同すると言いながら、自分たちの業務のやり方を変えることにはいろいろ理由をつけて反対するんですよ。けしからん話です」と憤っていた。

 私から言わせれば、典型的な駄目パターンである。駄目なのは利用部門じゃなくて、改革派のこの人である。「利用部門が抵抗するのは当たり前じゃないですか」と私が言うと、その人は少しムッとして「木村さんらしくもない。当たり前じゃなくて、それじゃ駄目でしょ!」と力説する。さらに続けて「いいですか。業務プロセスを全体で最適化すれば、利用部門の業務が効率化されて現場の仕事が楽になるのですよ。それを何度言っても理解しようとしない」と嘆いていた。

 その人がこの記事を読んでいれば気分を害すのは間違いないが、あえて書く。これは理想に燃える改革派の人が陥る最もアカン発想パターンである。そもそも自分も含めた「人」に対する洞察がなっていない。人はたとえ仕事が楽になると分かっていたとしても、今までの仕事のやり方を変えるのを嫌がるものなのだ。要するに、変えるのが面倒くさい。だから、いろいろと理由をつけてサボタージュしようとするわけだ。

 そんな話をこの人にすると、当初は「そんなばかな」と言下に否定していた。仕方がないので「あなたの作業机はいつも片付いていますか?」と聞いてみた。いきなり何を言い出すんだと不審の目を向けられたが、返答は「いいえ、机を片付けるのは苦手です」だった。これはもう説得するチャンスである。「机の上を片付ければ作業効率が上がるのを分かっているのに、なぜ片付けられないのでしょうか。要は面倒くさいからでしょ」と問うと、その人は「うーん」となって何となく納得したようだった。

 実は、この問答を契機に私も少し反省した。極言暴論ではDXなどの変革を阻もうとする抵抗勢力の存在を何度も描いてきたが、あまりに強大に見積もり過ぎていたのかもしれない。抵抗勢力の大半は、単なる「面倒くさがり屋さん」にすぎないはずだ。なのに、そんな軟弱な抵抗勢力によって改革が頓挫する。かつてのBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)もそうだったし、ERP(統合基幹業務システム)のビッグバン導入の際もそうだった。この問題はもう少し深く考えてみる必要がある。

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